① 「講師らしく」見せるボディー・ランゲージはこうする
講師らしく見せる
ボディー・ランゲージといってもいろいろあります。
例えば、参加者への視線、アイコンタクトのしかた、声の出し方、声のトーン、間の取り方、話している時の姿勢、表情、などです。
じつはこれが意外と重要になってくるのです。
あなたの講演やセミナーに集まってくれた方々は、おそらく何回もさまざまな講演会やセミナーに参加しているはずです。あなたが人生で初めての講師体験だとしても参加者にはまったく関係ないのです。
そこで、参加者に初めてだと悟られないようにすることも緊張しないためのコツなのです。それには、「講師らしく」見せることが大切になってきます。
まず、形から入っていくことも重要なのです。
まず参加者への視線の配り方ですが、一か所に視線をとどめるのではなく、ゆっくりと全体を見渡すように視線を投げかけていくことが大事です。
とは言っても、講師デビュー直後は、緊張してしまい全体を見渡す余裕がないのも事実です。
意識し過ぎていると言葉を見失ったり、忘れてしまったりしてしまうこともあります。
最初は気がついたら全体を見渡すようにするということでいいと思います。
場数を踏むうちにできるようになります。
あまり神経質になる必要はありません。
アイコンタクトというのは、参加者の方々と視線を合わせるということを言います。
アイコンタクトもデビュー当初は、あまり意識しないで行っても大きな影響はありません。慣れてくれば、大勢の方とアイコンタクトができるようになっていきます。
ポイントとしては、一人3~5秒間くらいアイコンタクトをすれば良いでしょう。
あまり長い間してしまうと聞き手の方が緊張してしまいます。見た目にも、ぎこちなさが残ります。
講師側からすれば、よくうなずいてくれる参加者を見ていると気持ちが安心してくるのですが、見過ぎているのも妙な感じがしてしまいます。
アイコンタクトは、簡単そうにみえて奥が深いスキルでもあるのです。
声の出し方は、人それぞれでいいのですが、基本的には腹式呼吸をしながら、へその下の丹田という部分から意識的に声を出すと落ち着いた重厚感のある声が出ると言われています。
私も試みていますが、あまり気にし過ぎない方がいいように思います。いつもの声でいいのです。
同じように、声のトーンは低い方が聴き易く印象に残りやすいと言われていますが、これもあなた独自のトーンでいいのです。
いつもと違う自分で話そうとすると、緊張してミスが出てしまい、焦ってしまうことから、結果的にメタメタになりやすいものです。
いつもの自分の声でいいのです。
間の取り方も同じで、いつもの自分の話し方でいいのです。
それがあなたの話し方であるからです。
場数を踏んでくることで、ポイントを強調する際の間の取り方も一呼吸置くようになってくるものです。
聞き手の表情を見ながら自然に話ができるようになるからです。最初から完璧を目指す必要はありません。
あなたのいつもの話し方こそが、オリジナリティなのです。
話をしている時の姿勢は、デビュー時から注意が必要です。
やはり、常に背筋を伸ばしていることが大切です。猫背は自信が薄いように見えてしまうので気をつけるべきだと思います。
背筋が伸びている姿勢の良い姿であれば、誰の眼から見てもちゃんと講師に見えるものです。
表情は、基本的には、終始にこやかで笑顔がポイントです。誰も難しい顔をした人から長時間話を聞きたいとは思わないものです。
サラリーマンを長年やってきていると、顔の表情がすぐに強張ってしまいがちの方がいらっしゃいます。
「オレもそうかもしれない」と思う方は、鏡の前で笑顔の訓練をする必要があると思います。
講師にとっては、表情も仕事のうちなのです。
② 上手な「締めの言葉」はこう言う
締めの言葉も大切です。
参加者の方々に、その日の印象を深めてもらうと同時に長く記憶してもらうためのものだからです。
私の場合は、「今日は、皆さんにコミュニケーション上の武器をお渡し致しました。
これで今まで以上に人とうまくやっていくことができると思いますので、ぜひ忘れないで使ってください。ご清聴ありがとうございました。」と言っています。このように言うと、参加者の皆さんが、あたり前ですが一斉に拍手をしてくれます。
これでおしまいとなるわけです。
すると、たいていの場合、個人的に質問されに来る方がいます。
皆の前ではいいづらいということがけっこうあるものです。
このように質問されに来る方は、真摯な姿勢の方が多くとてもうれしく感じるものです。
また、休憩時間中にも参加者から話しかけられると嬉しいものです。
セミナー中は、どちらかというと講師が一方的に喋っていることが多いだけに、質問以外に、話しかけられると参加者と打ち解けられているという実感が持てるからだと思います。講演やセミナーが終わってから、参加者が帰りがけに、「今日の話は、役にたちそうです」とか、「面白かったです」とかの感想を言われると、すごく嬉しいものです。
自分が話したことは参加者にとって無意味ではなかったと、あらためて自覚できるからだと思います。
というのは、いつも今日のセミナーで伝えることは、これで良かったのだろうかと思いながら伝えている部分があるからです。
現時点ではベストだと思うことを話し、資料も作るのですが、それでも絶対の自信はないのです。もっとわかりやすい言い方、もっといい資料があるかもしれないと思うからです。
ですから、参加者の方に帰り際に、このように声をかけられると嬉しいのです。こんな日は、帰りの電車の中でも充実感を感じることができます。
③ 上手な質問の受け方はこうする
講師らしい受け答え
初めて講師デビューする場合に、質問がたくさん来たら応えられるか心配だなと思われるかもしれませんが、実際は質問が来ないと逆に不安感にかられるのです。
質問があるとなぜかほっとするのです。
それは参加者が真剣に聴いてくれていたという証にもなるからです。
自分の話は参加者にとって無意味ではなかったと思うことができるからだと思います。
ですから、質問が来ることを恐れることはありません。
「ご質問のある方は、どうぞ」と言います。すると手が上がって質問が始まります。
その際のボディランゲージは、私の場合は、次の要領で行っています。
その質問者に対して、顔だけでなく身体全体を向けて質問内容を聞きます。
逐次、「はい。」とか「そうですね。」とか、うなずいたり相づちを打ったりしながら質問者の話を良く聴いているというメッセージを伝えるようにします。
ときどき質問の内容がわかりにくいことがあったりしますので、その際には、「~と、こういう質問でよろしいですか?」と質問者に確認するようにしています。
場合によっては、質問者が質問しているうちに、いくつも思いつくままに質問したり、話が長くなって何が一番聞きたいのかが曖昧になってしまうことがあるからです。
このように質問内容を確認すると、質問者にとっても自分が受け入れられたと感じ満足すると同時に、講師に対しても親近感を持ちやすいものです。
次に、質問内容について、会場の参加者全員で共有します。
それは、「今、○○さんより、このような質問がありました。」と会場に向かって伝えるのです。
この時、質問者の名前を言うかどうかはその時々の状況で違いますが、ネームプレートで名前が分かる場合には言うようにしています。
やはり名前を講師から言ってもらうことで質問者の満足感が違ってくると思います。
次に、会場の参加者全員に目を配りながら、身体も向け直しながら質問に簡潔に答えます。このときは、簡潔に短く応えることがポイントだと思います。
詳しく答えを言い始めると、あれも言わなくては、これも言わなくてはとなってしまい、長くなると同時に、聴いている側がよくわからなくなってしまうと思うからです。簡潔に応えることで聴いている側にも理解されやすいのです。
次に、会場の参加者の表情が、「ああ、そういうことか」というようにわかった感が出ていることを確かめたら、質問者に対して今度は疑問が解けたどうかを聞き返します。
「これで良かったでしょうか?」とか、「今の応えでおわかりになったでしょうか?」と言っています。この質問者に対する最後の確認は大切です。
この聞き返すことが無いままに、次の質問を受けてしまうと、質問者の気持ちが一段落しないことから、何か物足りなさが心に残ってしまうのです。
これは私自身が講演会などに参加して、質問した際に受けた感覚です。
こうすると講師側も気持ちがスッキリするものです。この段階で次の質問を受けるようにします。
以上、あなたが講師として初めて演台に立つ際にイメージトレーニングしておいた方が良いと思うポイントを述べさせていただきました。
なんでも準備しておけば、緊張しないであがりにくくなるものです。
最後に、一足先に「講師デビュー」した私自身の体験から述べさせて頂ければ、これだけの準備をバッチリしていたとしても、最初の講師の場では、いろいろとあるものなのです。
私の場合は、終わってみればボロボロでした。
たとえば、それは次のような点からでした。
・ 自分が、うまく言えなかった言い回しがあった
・ 自分で、ここはうまく説明できないなと思った
・ ここは少し補足が必要だと思った
・ スライドの順番を逆にした方がいいと思った
・ この「事例」では、わかりにくいのかなと思った
・ ちょっと気になった単語や文があった
・ こんな資料があればいいなと思った
・ ここに新たなスライドを入れた方がいいと思った
・ このスライドは、わかりにくいと思った
・ 参加者の「ノリ」がよくなかったところがあった
・ 参加者が意外と「盛り上がった」ところがあった
・ 補助資料やアセスメントを出すタイミングを間違えたと思った
・ この辺りで一度理解したかどうかを確認した方がいいと思った
・ この箇所で、この話はちょっと違うなと思った
・ 思ってもいないような質問が出た・・・等々
こんな感じで、やっている最中にいろいろ思ったり、気づいたりすることがあるのです。
最初だったので、緊張して焦っていたこともあるかと思いますが、これらを次回に活かすことで、より分かりやすく内容の濃いものとなっていくのだと思います。
ポジティブ思考で言えば、最初の講師デビューの場というのは、「気づきの宝庫」と言えるかもしれません。
いかがですか?ご自分の「講師姿」が、さらにイメージできてきたのではないでしょうか。
