犬や猫の寿命は今どのくらい?
老老介護に特になりやすいペットは、獣医療やフードの発展などで寿命が延びてきている犬や猫です。
「一般社団法人日本ペットフード協会」の平成30年の調査では、犬種や大きさによって差があるものの、犬の平均寿命は14.19歳です。
猫の平均寿命は15.97歳ですが、外に出る猫は13.63歳とやや低くなっています。(①)
犬や猫の15歳は、人間に換算すると約76歳(②)。
60歳で飼い始めた子犬や子猫が高齢になるころは、飼い主さんも高齢になっています。高齢ペットを、高齢の飼い主さんが介護する「老老介護」は様々な問題がありますが、ペットと暮らすメリットもたくさんあることをまず知っておいてください。
ペットと暮らすたくさんのメリット
ペットと一緒にいるだけでも幸せを感じるものですが、実際にさまざまなメリットがあります。
ペットと暮らすと、認知症予防が期待できる
毎日のご飯、散歩、お手入れ、掃除など、ペットのお世話にはたくさんの手間がかります。
「世話をする、役に立つ」という使命感が認知症を予防するといわれています。
人と接することが増え、孤独感も減る
フードやペットシーツを買いに出かける、散歩やドッグラン、動物病院に連れて行くなど外出の機会も増え、人と接することが増えます。会話も増えるため孤独感が減り、気持ちも前向きになっていきます。
健康にも効果がある
犬は毎日散歩をするので、運動による健康効果が得られます。またペットを撫でたとき、ペットも気持ちよさそうにしていると双方に「オキシトシン」というホルモンが分泌されます。
最近の研究では、人と犬が見つめあい心を通わせることでも、オキシトシンが分泌されることが明らかになりました。
オキシトシンにはきずなを深める、心を落ち着かせる、心拍数や血圧も低下させる効果があることがわかっています。(③)
3人もペットも年をとっていく
幸せをたくさんくれたペットも、病気や認知症になったり、立てなくなったりと介護が必要になることがあります。特に体調を崩したシニアの飼い主さんにとっては、大きな負担となりかねません。
犬や猫も認知症になる
人と同じく、犬や猫も認知症になります。犬の場合は特に夜鳴き問題で悩まされることも多く、飼い主さんやご家族が寝不足になるのはもちろん、ご近所から苦情がくることもあります。
個体差はありますが、認知症になると食欲が止まらない、家具と家具の間に入りこむ、飼い主さんのことがわからなくなる、などが見られることもあります。
足が弱って寝たきりになることも
高齢や病気のため、歩けなくなるペットもいます。寝たきりになると、床ずれ予防のために寝返りを定期的に打たせなくてはなりません。
ほかにも食事の介護、排泄を手伝うことは特に大型犬や中型犬では重労働になります。
人もペットも元気に過ごすためにできること
ペットは家族
ペットが少しでも元気に年を取っていけるように、飼い主さんが今からできること、それは毎日10分でもいいので「一緒に遊び、触れ合う」ことです。
いろいろな遊びで刺激をする
ペットはたとえ高齢になっていても遊びが必要です。犬は知的好奇心が強く、刺激や課題があるとイキイキします。お散歩は時々コースを変えてみましょう。
また、とってこいゲーム、かくれんぼ、引っ張りっこをするなど犬が喜ぶ遊びを考えましょう。
猫は本来、小動物を狩りして食べてきた動物です。転がすとフードがでてくるおもちゃを利用し、部屋のあちこちに隠してあげると狩猟本能が刺激されます。
また上下運動や狭いところが好きな猫のために、キャットタワーや簡単に隠れられるダンボールのおうちを置いておくのもおすすめです。
毎日ブラッシングやマッサージを
毎日のブラッシングは、毛の絡みや毛玉を防ぐためにも欠かせません。マッサージすることで、人もペットも癒され、気持ちも落ち着きます。
ペットの血行がよくなるほか、できものや痛みに早く気付くことができます。
犬はペットシーツで排泄できるようにしておく
散歩で排泄する習慣のある犬は、ペットシーツに排泄する練習をしておきます。
体が弱って散歩に出られなくなったときでも、家の中で排泄させることができます。
ペットの老老介護は「1人で抱え込まないこと」と「人と人の関係」がカギ
ペットの老老介護では1人で抱えこまないこと、そして飼い主さんとペットだけでなく、飼い主さんと人の関係も充実させることが大切です。
1人で抱え込まない
ペットの介護は1人で抱え込んでしまうと、飼い主さんの体調不良につながります。
ペットシッターさんやペット介護サービスに頼んだり、シニア専門のペットホテルに預けたりして休憩しましょう。
ペット介護グッズを使って、少しでも楽になるように工夫することが乗り切るコツです。散歩代行サービスや高齢者の見守りサービスなども、ためらわず利用しましょう。
往診してもらう
飼い主さん自身が車の運転が難しくなったり、抱っこできなくなったりすると動物病院に連れて行くことも困難になります。
往診してくれる獣医師に診察してもらうと負担も減ります。
プロにまめに相談する
定期的に健康診断を受け、獣医師、看護士さんやトリマーさん、ペットシッターさんに、まめに相談するようにします。
ペットの体調から、「実は飼い主さんの物忘れが始まっている」など、飼い主さんの異変にも気づきやすくなります。
ペットと入れる高齢者施設も検討する
ペットと入居できる高齢者施設やペットと通えるディサービスもあるので、今から入居の条件や料金などを調べておくと、いざというとき慌てずにすみます。
可能なら見学しておきたいですね。
万が一に備えて、ペットを引き取ってもらうことも考えておく
飼い主さんの万が一のときには、ペット専門の介護施設にお願いする方法があります。
または、ご家族や友人など信頼できる人に引き取ってもらえるように、あらかじめしっかり相談しておきましょう。
飼い主同士のネットワークを大切に
犬は散歩が欠かせません。散歩で出会う「飼い主仲間」がいると心強くなります。「最近、散歩で会わないから心配」「わんちゃん、ちょっと具合悪いんじゃない?」など声を掛け合える関係が理想です。
介護方法やグッズなどのさまざまな情報交換もできます。
家族や友人との交流を欠かさない
定年後の方や、猫の飼い主さんは散歩に出ないこともあり、人との交流が減ることもあります。
意識的に家族や友人との定期的な交流を欠かさないようにすることで、飼い主さんの様子がいつもと違う、ペットが弱っているなどの変化に気付いてもらいやすくなります。
最後まで精一杯愛することが大切
ペットの老老介護が負担に
ペットを飼うことで最も大切なことは「最期まで責任をもって面倒を看ること」です。しかしペットも飼い主さんも高齢になれば「老老介護」となり、大きな負担になることも。
老老介護を乗り切るコツは「1人で抱え込まず、早めに相談すること」「人とのつながりを欠かさないこと」です。
ペットとの暮らしを最期まで楽しく充実したものにするためにも、今すぐできるところから取り組んでみてはいかがでしょうか。
参考サイト
①一般社団法人ペットフード協会 平成30年(2018年)全国犬猫飼育実態調査結果より
③オキシトシンによるヒトとイヌの関係性 菊水健史 動物心理学研究 第67巻第1号 2017