【人生100年時代のシニアマーケティング(企業向け)】シニアにとって終活の悩みは、顕在していない

もともと生前のうちから”死”を考えることは、腫れ物を扱うよなものであり、多くの方が敬遠してきました。しかし、2012年「ユーキャン新語・流行語大賞」に”終活”という言葉がノミネートされたのを皮切りに、”死後”に対するイメージが180°近く変わり、生前のうちから葬儀・お墓・遺言・財産相続などの準備をしておく高齢者が増えてきました。また、”終活”を行うことで、老後生活や資金、死後の不安事の解消にも繋がるため、ストレスなく過ごす上で避けては通れないイベントの1つともなっています。 そこで今回は、老後生活を豊かに過ごすために欠かせない”終活”について、様々な角度から紹介していきたいと思います。“終活”を考えるのは当事者である高齢者だけではなく、家族や兄弟姉妹、さらには血縁関係のない方が一緒になってサポートする必要がありますから、他人事とは思わず、ぜひこの機会に学んでいただけたらと思います。
2019/08/29

そもそも”終活”とは?

楽天が2018年に20代から60代の男女1000人を対象に行なった「終活に関する調査」を見てみると、「終活という言葉を聞いたことがある人」は96.6%。日本国民のほとんどが認知していることが分かりました。

 

しかし、あなたは”終活”という言葉を聞いて、一体どのような活動のことを指しているか想像できますか?恐らくほとんどの方が”言葉だけ聞いたことがある”程度の理解となっていると感じますので、ここでは、”代表的な終活”について解説いたします。

エンディングノートを書く

1つ目は”エンディングノート”です。

 

正式な規格は存在せず、自由形式で気軽に書くものなので、もっとも取り掛かりやすい終活となります。「家族のために用意しておく手紙」といったイメージが近いかと思います。

 

具体的には、「自分に関すること」「延命治療の有無」「葬儀・お墓に関する希望条件」「家族に伝えておきたいこと」などを生前に書いておく方が多いようです。

 

しかし、エンディングノートには法的効力がないため、”財産相続”に関する記述があっても無効になってしまいます。反面、誰でも開封することができますから、あまり固くならず、自分の思うままに執筆して、残された家族のための言葉を残しておきましょう。

葬儀・お墓の準備

葬儀やお墓の準備をしておくことも重要視されています。

 

と言いますのも「葬儀では誰を呼びたいのか?」「先祖代々のお墓に入りたいのか?」生前から伝えておくことで、家族の負担を軽減できるからです。

 

また、葬儀のスタイルや、お墓に関する要望を本人が確認しておくことで、「いくらお金を残しておけば良いのか」大方の目星がつくようになります。

 

特に、近年では葬儀・お墓の在り方も変わり、様々な選択肢がありますので、コスト面を調整することも可能です。

遺言書/身辺整理

死後、もっとも多いトラブルとして”財産相続”が挙げられます。

 

そこで、前もって遺言書を用意しておき、法的効力のもと「誰が何をどれぐらい」相続するか決めておきましょう。生前であれば、遺言書は何度も書き直しができますので、3~5年ぐらいの短いスパンで見直し・訂正をする方もいらっしゃいます。

 

また、生前に身辺整理をしておくことも大切です。基本的には、財産・形見分け・不用品の処分が中心となります。ですが、人によっては見られたくないもの・知られたくないものもあるでしょうから、身体が健康なうちに整理を始めておくことをオススメします。

終活に対する意識

先ほどの調査結果から、国民の大半の”終活”対する認知度が高いと分かりましたが、当事者である高齢者は”終活”に対してどのように感じているのでしょうか?

 

この章では、シニア予備軍以上の男女を対象としたアンケート結果を参考に、高齢者の「就活に対する意識」を見ていきます。

終活のハードルは高い

仏事関連総合サービスの株式会社メモリアルアートの大野屋は、2018年に41歳以上90歳以下の男女に対して「終活の意識調査」を行いました。

 

そして、「現在”終活”をしていますか?」という質問を行ったところ、「するつもりがない」と答えた方が57%。

「したいと思っているが、まだ何もしていない」が36%。

「している」と答えた方はたった8%。

”終活”の認知度とは裏腹に、シニア予備軍およびシニア層は、92%の方が終活をしていないことが判明しました。

 

ここから言えることは、シニアにとっての終活の悩みは、まだ顕在化していないということ。事実、高齢者の中には「何をすれば良いのか分からない」と答える方や、終活に対してネガティブに捉えている方が多く、あえて避けている印象。

 

実際に動機付けるには、まだまだハードルが高い状態であるようです。

現在”終活”をしていますか?(株式会社メモリアルアートの大野屋調べ)

終活は「老後生活を豊かにするもの」である

実際に行動に移していないということは、端的にいえば”終活”に対してメリットを感じていないということになります。

 

では、”終活”を行うことでどんなメリットがあるのでしょうか?

 

まず始めに挙げられるのが、「老後資金」の算段がつく、ということです。終活を行うことで「自分の理想の最期」を想定し、”何にどれだけお金を使うか”ある程度目星をつけておくことで、老後生活はもちろん、死後の不安も解消されることでしょう。

 

また、「家族への負担を軽減できる」ことも挙げられます。家族からすると「少しでも良い葬儀・お墓を…。」という思いがあるかと思いますが、死を迎える本人としては、「なるべく家族には迷惑をかけたくない」と感じているものです。

 

そのため、生前にある程度「どれぐらい費用がかかるのか」計算しておき、老後資金を確保した上で自分の要望を決めておくことは、家族のためにもご自身のためにも重要なことなのです。

独り身の方は、早急に財産相続の準備を

一方で、配偶者・子供、兄弟姉妹もいない独り身の高齢者の方は、自身が死亡した後「どのように財産を使うか?」早急に決めておく必要があります。

 

我が国日本では、財産の相続人がいない場合、国庫に保管されるか、裁判所から選定された”相続財産管理人”に引き継がれるため、”あえて避ける”という選択はオススメできません。では、どのようにするのが一般的なのでしょうか?

 

良くあるケースとしては、遺言書を作成しておくことで家族以外の身近な人に相続させたり、非営利団体などに寄付金として贈呈するケース。

 

特に最近では、特別な手続きのいらない”自筆証書遺言書”も認知され始めていますし、遺言書自体のハードルも低くなってきていますから、自身の意思がしっかりしているうちに必ず準備しておきましょう。

終活ビジネスも活発に

シニアビジネスの中でも、注目を集める”終活ビジネス”。

 

通例では「葬式を上げ、先祖のお墓に入る」ことが常識とされていましたが、その固定観念をも覆す様々なサービスが登場しています。

 

自身のためだけでなく、ご家族の選択肢も広がるよう、ぜひこの機会に知っておいてください。

葬儀形態は多様化

今までの日本では”葬儀”に対して閉鎖的で、たとえ金額が高くても慣習を守り通す傾向にありました。しかし、「イオン株式会社」や「株式会社よりそう」を始め、リーズナブルな価格設定を掲げる企業が続々と参入しています。

 

さらに、ロマン溢れる「宇宙葬」や、参列者の負担を軽減する「ドライブスルー葬儀」と呼ばれるサービスも登場し、話題を呼んでいます。低コストでありながら、死者の希望を叶える葬儀形態は、今後もますます登場する見込みです。

 

終活ビジネスは、何も高齢者だけをターゲットにしているのではありません。

 

例えば、余命宣告された方などが、生きているうちに大切な人に感謝を伝えるという意味で「生前葬」を執り行ったり、お寺の住職の代わりにロボット(ソフトバンク社のペッパー)が読経するサービスをご存知の方も多いでしょう。

 

これらのサービスは”モラル面”で大きな課題が残っていますが、今までの葬儀の常識は、もう通用しない時代へと突入しているのです。

まとめ

動物にとって「自分の死を意識する」というのは、物凄くストレスのかかることです。

 

しかし、私たち人間は”未来を想像する”ことができるため、生前に終活をしておくことで死後に起こるであろう様々なトラブルを避けることができます。

 

そればかりでなく、”自分の理想の死”を決めておくことで、より豊かに老後を送ることにも繋がってきます。

 

このように終活をするメリットは十分あるのですが、当事者である高齢者はおろか、我々国民のほとんどが”終活”に対してネガティブな印象をもっています。

 

ですから、もしあなたが終活ビジネスを行う場合、いきなり「終活は絶対に必要ですよ!」といったように宣伝するのではなく、「終活は、老後人生を豊かにするための人生設計なんですよ!」と啓蒙啓発するようなイメージでアプローチすることを心がけてください。

 

そして”終活”とは、人生の死を意識することではなく、人生をより豊かにするものであることを気づかせてあげることが何より大切になってくるでしょう。