「お墓が選べる」とは、どういう意味?
多様なニーズを受けて変化しつつあるお墓のスタイル
代々受け継がれて行く墓には家族親族しか入れないと思われがちですが、そうではありません。
永代使用の契約を結んだ権利者(墓所の利用者)と霊園の管理者が許可すれば、親族でなくとも入れます。
それでも、代々の墓に入ることに気持ちの上で納得できない人もいるでしょうし、代々のお墓から縁遠くなった人もいるでしょう。
特に近年は、家族がいても「一人で静かに眠りたい」と希望する人が増えつつあり、お墓は “家のもの” から少しずつ “個人のもの” へと移ろい始めています。
そのようなニーズを受けて、お墓のスタイルが多様化し始めた現代。
お墓を、それぞれの好みや希望で自由に選べる時代が到来しました。
お墓にはどんな種類があるの?
「一人で静かに眠りたい」が叶う時代
お墓の種類を、ここで詳しく見てみましょう。
- 家墓(一般墓)…代々の親族が主に入れる墓
- 合同墓(共同墓地)…血縁に関係なく入れる墓。合祀墓、集合墓とも
家墓は墓石に家名を彫って建て、家族親族を中心に埋葬するもの、合同墓は霊園の中にある供養塔や合祀専用のために建てられた墓などの中に遺骨を埋葬するものです。合同墓は一人でも入れます。
加えて、利用者のニーズやそれぞれの事情に合わせて、以下のようなお墓のスタイルが誕生しました。
- 納骨堂…一般墓に近い形で埋葬。のち合祀となることが多い
- 樹木葬…自然葬、一般墓スタイル、合同墓スタイルなど様々な様式がある
- 送骨…遺骨を宅配便などで寺院へ送って供養してもらうもの。合祀が前提
納骨堂は、永代供養の契約を結んで納骨し、最終的には合祀を前提とするものでした。
最近では家墓と同じように供養を続ける霊園もあるようです。
樹木葬は、何らかの樹木をシンボルツリーとして植え、その下や周りに遺骨を埋葬するスタイルです。
最初は散骨(自然葬)の形で始まりましたが、最近では小型の墓石やメモリアルプレートを用いて納骨する霊園が増え、家墓よりも負担が軽減できるお墓として全国に広がりました。
納骨堂も樹木葬も、一人でも入れます。
送骨は、形式としては合同墓に入ることになりますが、全国どこからでも予算に見合った霊園に頼めるのがメリットです。
遺骨を宅配便で送るので「送骨」と表現されます。
そして、今では多くの霊園が「永代供養」をうたっており、お参り手がいない人でも安心して眠れるように整えられています。
永代供養墓とは、霊園が責任を持って供養を続けてくれるお墓のこと。
一人で静かに眠りたいという願いも、無理なく叶えられる時代になったのですね。
(画像:写真ACより)
予算でお墓を選ぶ、という選択
予算をまず立てて、全国に目を向けてみる
お墓の価格にはかなり大きな差がありますから、お墓の購入を考えるなら、先に予算を立ててから探し始める方が迷いを抑えられます。
一番安価なお墓を選びたいなら、送骨を前提に全国で探すと良いでしょう。
インターネットで「送骨」と検索するとヒットします。
最低価格は、1万円〜。プラス遺骨の送料のみで供養をお願いできます。
時にはお参りにも行きたいと望むなら、身近な場所にある合同墓が適しています。
地域にもよりますが、民営霊園では2万円〜という低価格での募集もあるようです。
行政が管理している公営霊園も比較的安く入れます。
ただし公営霊園は申し込みの際に満たさなければならない条件があるため、事前にしっかり下調べしておく必要があります。
最高価格については、お墓の形や石の種類、規模、プラスするオプションなどで大きく異なるため断定ができません。
例えばSL機関車やギターなど、故人の好きだったものを模した「デザイン墓石」というジャンルがありますが、こういったオリジナルの墓石を用いたい場合は、やはり2〜300万円はかかると見ておかなければなりません。
筆者がこれまでに見た個人のお墓の中で、一番大きかったのは3メートル以上の高さはあろうかという、人の手を模した墓石でした。価格は確かめられませんでしたが、作製にはかなりの費用がかかったことでしょう。
お墓にお金をかけるか否かは、家庭の経済状況だけでなく、墓や魂に対する考え方、埋葬される人の立場など、様々な要素を受けて決定されるものです。
寺院霊園に頼んで宗派に沿った供養をして欲しいと望むか、残された親族がお参りに来られる距離にいるかどうかでも変化するでしょう。
そこに加わったのが、新しい時代のお墓選び。「予算ありき」の考え方です。
形式にとらわれずに価格優先でお墓を探すのも良い選択と言える時代になりました。
(画像:写真ACより)
自由なお墓選びを成功させるために
自由なお墓選びとは、伝統に縛られないという意味でなく、「心地よく眠れるお墓選び」が最大のテーマだと言えます。
伝統的なお墓でも、遠方の合同墓でも、花が咲く開放的な樹木葬でも、入る本人の望みが叶っていれば問題はありません。
見送る家族の気持ちが優先されるべき状況なら、そのように選んでも良いのです。
「私」が納得して選んだお墓を、誰からも責められる必要のない時代になったのですから。
ここで心に留めて頂きたいのは、「お墓選びに間違いはない」ということ。
誰しもいつかは眠ることになる場所なのですから、それぞれの希望を叶えられるお墓を選びたいものですね。
次回は、もっと細やかなニーズに答えられるお墓のスタイルについてご紹介します。
※文中の価格は全て2019年7月現在のもの。