コーチングでは、重要な要素のひとつに「肯定」という考え方があることをお伝えしましたが、もうひとつ、研修の中で私がお伝えする事例があります。
それは、「感謝」という「肯定」の中のひとつの行為を説明する際に、参加者にお伝えしている事例です。それは、偶然テレビ番組を見ていて発見したことです。
以前、NHKの「プロフェッショナル」という番組を見ていた時でした。
1回の手術時間が9時間にも及ぶ非常に困難な大手術をヘトヘトになりながらも、毎日毎日続けている脳外科医の話に、司会の茂木健一郎さんが耳を傾けている時でした。
脳外科医に茂木健一郎さんが尋ねました。
「なぜ、そんなにしんどい大手術ばかりをするんですか?」
すると、脳外科医は次のように答えたのです。
「手術が終った後に患者さんから“ありがとう”と言われるからです」と。
あまりにも素朴で無防備な返事にも驚きましたが、その脳外科医は本音を口にしていたのです。
人から「感謝」されるということは、自分自身が「肯定」されているという証であるのです。
「感謝」は、「肯定」することの中のひとつでもあるからです。
「感謝」されるということは、自分が存在しているということを他人が認めてくれている証だということです。
人に「感謝」されることで、自分で自分の存在を肯定することができます。
「私は、これでいいんだ」と確認できます。
自分で自分を認めることができるという感覚は、私たちが生きていく上で非常に大切なことです。
自分の「今」を肯定できると、「未来」に新たな一歩を踏み出す勇気が湧いてくるからです。
患者さんからの、心からの「感謝」を貰うことで、脳外科医は強い自己肯定感を抱くことができていたのだと思います。
そのことが、次の困難な大手術に立ち向かう意欲と勇気の源泉になっていたという話です。
テレビ番組も、最近はドキュメンタリー番組が多くなってきていますから、このように、人の気持ちの動きを映像であるがままに撮っていることがあるのです。
こんな場面を見ることができれば、知識の「裏付け」ができます。
自分一人では、到底知りえない事実を知ることができるということは、とても大事なことだと思います。
間接的に講師から聞くことで、参加者も知識に深みが加わります。そして長く記憶に残るはずです。
同じように、あなたの持っている知識や知見を、普段の生活の中で見聞きしたことに、あなたが一番伝えたいと思っている「思い」をドッキングさせて、聞き手に強く印象づけてください。
なお、拙著「定年前後の人のための講師デビュー入門」(同文館出版)には、特別付録として「自分だけのテーマがすぐ見つかる!一発検索オンリーワンテーマ発掘チャート!」が盛り込まれています。
ご興味のある方は一度活用してみてください。