終活の「これまで」と「これから」
終活の始まりは「死に支度」
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少子高齢化や核家族化といった時代背景から、もしもの時に家族や周囲の人に迷惑をかけないように、葬儀や墓の手配などの「死に支度」を行っておこうというのが終活の始まりと言われています。
「家族や周囲に迷惑をかけたくない」という観点から終活に取り組むことは、いまや当たり前とも言えるほど浸透していますが、終活を始めてみると、自分の人生を振り返って、自宅や身の回りの整理、気持ちの整理ができ、残りの人生をどう生きるかを見つめることにつながります。
そういった意味でも、人生の総仕上げにおいて終活は必要不可欠と言えます。
人生100年時代でも健康寿命は70代前半
人生100年時代といえども、健康に生きられる時間が100年というわけではありません。
厚生労働省によると、介護を受けたり寝たきりになったりせず日常生活を送れる期間を示す「健康寿命」は、男性が72.14歳、女性が74.79歳と公表しています。(2016年)
つまり、後期高齢者と呼ばれる75歳を迎える頃には、元気で自立した生活を送れなくなっている可能性があるということです。
そうなると、より自分らしく生きるための「終活」は、葬儀やお墓などの死後に必要な「慣行」だけでなく、人生を謳歌するために、元気なうちに取り組んでおく必要がある項目を洗い出し、優先して準備を進めましょう。
終活は何から始めればいい?
終活は大きく分けると「生前の準備」と「死後の準備」。
「終活」という言葉からイメージできるものでは、終わりに備えるために必要な終活として「財産の整理」、「相続」や「遺品整理」、「葬儀・お墓」などがあげられます。しかし終活は「死後の準備」だけでなく、生前に取り組んでおくべき項目があります。
簡単に始められる項目としては「エンディングノートの作成」や「生前整理や断捨離」、あとは「遺影準備」や「家系図・自分史作り」「介護・終末期医療」、「生前贈与・家族信託」なども広義には終活と言えます。
最近では、死後の準備に生前から取り組んでおくことで、家族の負担を減らすだけでなく、自分の意向で決めることができる、死後を託せる人がいないなどの様々な理由から、生きているうちに死後の準備に取りかかる人が増えていることから、生前契約のサービスも増えています。
葬儀やお墓はもちろん、死後の事務手続きなども生前に準備することがができます。遺言書の作成や信託などを活用して、争族を防ぐこともできます。
これまでは、本人の死後に、残された家族が対応することが当たり前だったことが、社会背景やライフスタイルの変化によって自分の最期は自分で決める時代へと移り変わっています。
元気なうちしか取り組めない「終活」に重点を。
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40年ぶりに相続法が改正されたことで、終活業界では「相続」をフックとした終活セミナーや講座が人気を集めており、終活ビジネスは活況を迎えています。
相続が残される家族にとって重要な項目であることは事実ですが、「自分らしい人生の総仕上げ」として必要な項目を考えた時、そこに差が生まれることは明白です。
例えば筆者の場合、これだけはやっておきたい終活を考えた時に「見られたくないものの処分」や、「捨てられたくないもの、次代に残したいものの伝承」が最優先です。
次に、一番のお気に入りの服を着て、プロカメラマンに自分史上最高の写真を撮ってもらい遺影として残すこと。憧れの旅行地を訪れること。
仲の良かった旧友に再会すること、生前葬やお別れ会を開くこと・・・その日を迎えた時に「思い残すことはない」と思えたなら、自分らしい最期と言えるのではないでしょうか。
終活は「生き方」「自分らしさ」を盛り込むべき最後の表現の場
介護に相続、葬儀にお墓・・・
生前にしっかりと準備できていれば、それにこしたことはありませんが、もしもお墓や葬儀の準備ができていなかったとしても、弔いのかたちが多様化している現代においては、費用や時間をかけずにできる供養を選択することもできます。
人生100年時代を乗り切るためには、まず美容や健康、病気のこと、お金のこと。
そしてシニア期の膨大な自由時間を謳歌するために、趣味や目標を持つこと。
その中で、少しずつ自分にとって必要な終活を洗い出して取り組むことで、人生の後半戦はより豊かで充実したものになります。
終活は単なる死に支度ではなく、生きた証や自分らしさを盛り込むべき人生の集大成です。
自分らしい最期を迎えるために、元気なうちから取り組んでいきましょう。