長年、科学者や環境保護活動家たちは「衣服を洗濯するというシンプルな行為が、ファイバーを放出する原因になっているとしたら……」と心配し続けていたそう。
その心配が現実のものとなったのが、イギリスのプリマス大学の研究チームがMarine Pollution Bulletinで発表した調査結果です。
長年、科学者や環境保護活動家たちは「衣服を洗濯するというシンプルな行為が、ファイバーを放出する原因になっているとしたら……」と心配し続けていたそう。
その心配が現実のものとなったのが、イギリスのプリマス大学の研究チームがMarine Pollution Bulletinで発表した調査結果です。
その調査結果が前述した一般的な家庭用洗濯機で洗濯をするたびに、約70万本のファイバーが放出されるというもの。
微細なファイバーは、下水処理場のフィルターをすり抜け、自然環境へ流れ出し、生態系を脅かしています。
ファイバーの大きさは、0.355mm。
微細でありながら、海洋生物の環境には大きな問題を起こします。
なぜなら、このファイバーがPCB、殺虫剤、モーターオイルなどの有害物質をスポンジのように吸収し、食物連鎖を汚染します。
2016年初頭には、ヨーロッパの研究者たちによって「ファイバーを接種した稚魚は、その影響で成長を阻害されたり、捕食者に対して虚弱になっている」と報告されました。
この研究結果を再度確認するため、プリマス大学のRichard Thopson教授は、洗濯の標準的な水温とされる30~40度の水で、洗剤、柔軟剤を使って合成繊維を洗濯しました。
その排水を走査型電子顕微鏡で観察し、ファイバーの質量、量、サイズをチェックしたと言います。
6kgのポリエステルとコットンの混合素材を洗濯した場合は約13万8000本、ポリエステル100%素材の場合は約49万6000本、アクリル素材の場合は約72万9000本ものファイバーが検出されました。
ただし今のところ、ファイバーの量によって、どのぐらいの水域環境に影響するのかはわかっていません。
アメリカでは、洗顔料や歯磨き粉などに含まれる、プラスチックの微粒子「マイクロビーズ」の使用を禁止する法律が成立し、2017年7月から段階的に規制が始まります。
とはいえ、衣服に合成繊維の使用を禁止するというのはまだまだ難しいところ。
繊維会社の工夫、排水のろ過システムの向上など、別の解決策が必要だとThompson氏は提案しています。
現在、研究者たちは放出されるファイバー量が多い布地について研究を進めています。
これが解明されれば、衣服の製造方法だけでなく、私たちの選択方法も変わってくるでしょう。
また、洗濯機の回転速度やフィルター機能もまだまだ改善の余地があります。洗濯機自体の性能の向上によっても環境は守られるでしょう。
洗濯によるファイバー放出には、まだまだわからないことがたくさんあります。
今すぐに解決できる問題ではありませんが、私たちにもできることはあります。
例えば、洗剤や柔軟剤を使用すると、さらに多くのプラスチック粒子が放出されると言います。
柔軟剤や洗剤の使い方についても見直すだけで、環境破壊を防ぐことに繋がります。
この記事を書いた人
株式会社アピッシュ 代表取締役社長
山崎美香
洗濯代行サービスのパイオニア「WASH&FOLD」1998年7月 創業。創業当時は渋谷区神宮前にて飲食業を中心に事業展開。新規のケータリング事業の視察で米国に出張した際、現地のコインランドリーで“WASH&FOLD”というビジネスと出会う。その後、2005年3月に日本発出店となる1号店を渋谷区代々木にて「お洗濯から解放される新習慣」をコンセプトとする洗濯代行サービス「WASH&FOLD」をオープン。2017年4月には旗艦店として中目黒高架下店をオープン、現在は25店舗を展開中。
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