毎年、日本銀行の金融広報中央委員会が実施している『家計の金融行動に関する世論調査(2017年)』にある「老後に掛かる生活費や貯蓄に関してのアンケート」の結果では、全世代である20歳代から70歳以上の生活費の平均値が公表されました。
老後に掛かる生活費や貯蓄に関してのアンケート
年金だけでは賄えない。老後に必要な生活費は月額27万円。

老後に必要な月額の生活費最低予想額は 27万円となり、年金支給時までに最低限所有しておきたい貯蓄額は平均で2,080万円となりました。
また、厚生労働省が発表する「モデル世帯の夫婦2人世帯の年金支給額」は、2017年で、月平均221,227円となり、2016年度の221,504円より277円減額という結果もでています。
ここで想定している最低限必要な生活費の27万円を年金支給額のみで賄うことは厳しい状況です。
老後の生活水準を考えるときの「3つの選択肢」

定年退職を控えた現役世代の方々は、老後に毎月、一体いくら必要なのか、いくら使えれば生活できるのかを考えることがあるかもしれません。具体的な生活費は何万円ぐらい必要なのか、頭に浮かばないと思いますが、イメージしておくことは大切なことです。現在の生活水準は最低限維持して行きたいのか、金額を引き下げて、これまでよりも節約しながら生活していくのか、現在よりもゆとりを持った生活をしたいのかを考えてみたら良いと思います。
今現在の生活費が月額25万円位で生活している家族の場合で、試算してみると、おおまかに掛かる生活費の水準がイメージ可能です。
(1)現状を維持する場合は、老後でも月額25万円で生活をする。
(2)ガマンして生活をすると、月額20万円位か、それ以下で生活費を抑える。
(3)ゆとりがある生活をする場合は、月額25万円に加算する額を上乗せして生活していく。
老後(定年後)に掛かる生活費を項目別に検討する
総務省が調査している、夫婦2人以上の世帯の家計調査(2018年8月)を見ると、無職を含む世帯の1カ月の平均支出は以下の通りです。
支出合計 250,270円
内訳
食費66,305円
家賃等15,006円
公共料金(水道、電気、ガス)19,488円
家具代11,941円
洋服等 7,487円
医療保険16,045円
携帯電話代等通信費31,824円
教育費1,307円
趣味や娯楽24,043円
その他(理美容、おこずかい、交際費、雑費、嗜好品)45,661円
税金と社会保険料11,164円
以上の金額が、老後に掛かる生活費の内訳になります。
イメージできれば良いのですが、ご家庭ごとに様々な支出の特徴がありますから、そんなに単純比較というわけにはいきませんね。また、忘れてならないのが、人生はまだまだ長いということです。
人生が100年とすれば、定年を65歳としても、あと35年残っているわけですから、様々な不可抗力があります。そのうちの大きな1つが『物価上昇』。老後の備えを考える上では、物価上昇を考慮しなければいけません。
物価上昇により次の項目で生活の影響を説明します。
老後の生活費は、物価上昇を予測して考えておく
物価上昇を予測しておくということは、今から定年後、そして100歳を迎えるまでにどの程度の時間があるのかです。
例えば、今現在35歳の人の場合には、25万円で生活する計算であれば、老後の年金受給開始になる65歳まで約30年間あります。
老後になっても現在と、同等の生活水準を維持するためには、単純に25万円で生活可能と考えてしまいがちですが、そう上手くは行きません。
65歳になるまでに、物やサービスも値上りしていくことを考慮しておくことが必要です。たとえば、25万円でできている現時点の生活ですが、物価が2%ずつ毎年上昇すればいくら必要になるでしょう。
注:以下リンクのように、公的年金はインフレになると原則として支給額が増えるので、インフレのリスクが原則として無いとされていますが、実態はリスクはあるのではないでしょうか?
仮に2%の物価上昇を加算しておく(老後の生活費)
もしも将来、毎年少しずつ物価が上昇すれば老後の生活費は、どうなるのかを計算してみましょう。
物価が2%ずつ毎年のように上昇すれば、物の価値が1.02倍上がっていくことになります。試算してみると、今25万円で購入できるものは、2%ずつ毎年値上がりしていったと仮定すると30年経ったときには、45万2,840円となっています。
次に実際に上昇する物価と、年金支給額は一体どうなるのかを次項で紹介します。
たとえ物価が上昇しても、老後に受け取る年金支給額は増加しない
政府と日本銀行は、アベノミクスの政策のとして、物価を2%ずつ上昇させる目標を掲げています、これにより生活費等の負担が増加します。
政府の考えている思惑どおりになれば、消費税とは別に、その後、物価は毎年2%ずつ上昇していくことになりそうです。会社員等は、所得が増えるので、家族や社員は喜んでいるのですが、この場合に最も打撃を受ける人は年金生活者です。
現状25万円で生活している家族の場合には、将来年金支給額が25万円もらえたとしても、生活が成り立たなくなります。現状25万円で購入できる物やサービスは、物価の上昇幅が毎年、2%上昇するのであれば30年後は約45万円となるので、約半分しか購入できない事態になります。
その場合には生活費を20万円も削減する必要があり、とても現実的な金額とは言えないのです。
まとめ:国や自治体に頼りすぎず、個人でも対策が必要になる
「老後はまだまだ先のことで、何とかなるのでは」とも言っていられない状況ですね。
物価が今後2%ずつ上昇するとして、現状100万円の価格は単純計算で60%アップの160万円になり、30年後であっても受け取れる年金額は1.1%×30年経過しても33%しか増加せずに、100万円は133万円にしか増加しません。
ところが物価が160万円に増加し、年金受給が133万円なら生活がさらに厳しくなることが想像できます。
このように定年後、老後をとりまく生活環境が変化していけば、個人で対策も必要になります。家計の収支バランスを再検討し見直しと改善をして、金融商品への投資などの上手な活用による財産づくりや、人生設計を見渡して賢いマネー計画を策定しこれからの準備に時間を掛けましょう。マネーの知識をつけながら行動していくことが、ご自身を助けることになりそうです。
(最終的な投資判断はお客様御自身の判断でなさるようお願いいたします。)
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