化粧は、古代には災いを防ぐということから発生しました。
極彩色の化粧を施し、華美な服装を身につけることで、病気や目に見えない悪魔から身を守るために生まれました。
古代の人々は徐々に、男も女も山野をかけめぐる生活から、次第に家族構成ができ、男女の仕事の役割も分けられていきました。
女は食べるものの用意と支度、洗濯にと忙しくなり、水とのかかわりが深まっていきました。
そのような生活の中で、水面に映る自分の姿に、最初は驚きと不思議さにとらわれました。
男たちもまた、獣と戦い返り血を浴びたり、山野をかけて食物を得ることに追われて、汚れた体を清めるために川にいきます。
後世「水鏡」の水面に映った自分の姿を見たとき、男もまた興味深く神秘を感じ、他人との違いにも気がつきました。
「水鏡」を見たことで、自分の姿を知り身だしなみを整え、同時に化粧も発達していったのです。
自分が他人より美しくあろうという工夫も始まりました。
美しいものに引かれるのは、古来から続く人間の本能ともいえます。
人より美しくなるために、きれいなものや美しいものを手にいれるために、男たちは自分の権力を高めていく熾烈な努力と競争がはじまりました。
美しい女を妻や恋人に持てばその男の価値が上がり、強い男と美しい女が結ばれれば、優秀な遺伝子が自分の子供たちにも受け継がれることも学び、知能を磨く教育も発達していったのです。
さまざまな情報を得れば得るほど、人は美への憧れが強くなっていきました。
歴史を重ねて、国は次第に都市と村落とに分けられ、自然に政治も経済も交通も貿易も発達したところに美の中心は移っていきました。
歴史的にみても、化粧は、本能的な人間の美意識とともに形成され、文化とともに発達してきたのです。
たかが化粧などと侮れない、長い人類の歴史と文化に裏打ちされた美容における化粧なのです。