シルエットを整える
私が二二歳で魅力学研究家、美容家でデビューしたときの服装はスーツでした。
スーツというのは、現在も会社員の正装とされていますね。男女共にスーツの着こなしはシルエットを整えて見せる最強の服装です。
自分の体型の欠点や長所を生かすには、シルエットを服装でビシっと決めること。
それには、ポイントになる箇所が、体にキレイにフィットしているかで決まります。
A「スーツは肩で着る」といわれています。
肩幅が狭いとタスキ状にできるシワ、首の後ろに出るつきジワ、脇のあたりが、パチンパチンではじけそうな状態。肩の周辺が崩れていると、スーツ全体のシルエットも台なしになるので、この辺のフィット感には神経を使ってください。
B「袖丈」は自然に腕を下げて、親指の先から一二~一三センチ上、シャツの袖が一センチのぞく程度の長さにします。
C「裾丈」スラックスやパンツもサイズがあっていないと、ヒップや前部太ももに不自然なシワが生じるポケットやタックが開いてしまいます。
理想は不自然なシワがなく、中央の折り目が真っすぐに足の親指のつけ根にまでのびていることです。
D「Vゾーンのシルエット」の確認。
ワイシャツやブラウス、ネクタイとスーツのコーディネートの趣味が一目瞭然で分かるからです。
Vゾーンのシルエットは肩のサイズが適性でないと崩れてしまいます。
さらにバストや腹部のサイズによっても、Vゾーンはシャープになったり、ぶざまに歪んでしまったりします。
理想のサイズは、ボタンを締めたVゾーンの内側に自分の手を入れてみて、胸とスーツの間に手が入るだけの余裕があれば、そのスーツ本来の美しいシルエットが作られます。
どうしても自分のシルエットの良さの決め手が引き出せないときには、プロの力を借りるのもひとつの方法です。
カラー(色彩)コーディネートが印象を左右する
色彩にはそれぞれ人の心に影響を与える力を持っています。色彩心理学という分野があるくらいです。
カラーコーディネートは、色彩の持つパワーによって、仕事のマンネリを打破するカンフル剤になるし、疲れた自分を癒してくれる効果にもなり、『活力』を生んでくれるのです。
適度に流行を取り入れる
自分の好きなものが似合うと決め込み、十年一日のごとく新調するときにも、常に変わらない同じ型のスーツを買う男性がいます。
自分のポリシーだと自慢する人もいますが、周囲の人たちからは、単なるマンネリにうつるだけです。
あまりに流行遅れだと、その人物に対する評価も「時代遅れの古い頭の持ち主」と受け止められてしまいがちです。
女性の場合も体型を無視し、体に不似合いな若見えファッションもおぞましい印象を与えてしまいます。
適度に流行を取り入れるのは「今を生きている」感性の表現です。
センスを見せる小道具
メガネやリング、ネックレス、時計、ベルト、カバン、ハンカチーフ、カフスボタンなどを選ぶときにも、大事なのは、それを身につけたときにシルエット全体が美しく見えることが大切です。
頭の中でバランスをはかるより、実際につけてみたりして調和をはかります。
TPOに合わせる
時と場所、状況を考えた服装を整えられることも、魅力的な印象を与える要素として忘れてはいけません。
服装に込められたメッセージ
着こなしにおいてなにより大切なのは、シルエットです。
シルエットというのは、すべての人が誇るべきほど素敵であるとは言い難いと思います。
足が短い、腹が出ている、やせてあばら骨が突き出しているなど。しかし衣服をつけることで、第二の皮膚の欠点を補い、本来の姿より美しくカッコよく見せることができるのが、服装法なのです。
シルエットが合っていないということは、自分というものが分かっていない証拠。
自分の性格の長所、短所を知ることはある意味で辛いけれど、自立した人間ならできるはずです。
品があり、清潔で感じのよい服装は対人関係においても大きなメリットにつながります。
私自身も人前に立つことが多いので服装には心を込めます。
講演の後には私の着ているものが話題になり、選ぶ基準を質問されることも多いです。
ブランドや高価な服にこだわらずシルエットとカラーを基準に選び、色彩のインパクトを考えますとお答えします。
そのために〝健康法〟も大事なので、体を鍛えて服装による個性表現の効果を上げる努力もしています。
イギリスの歴史家トーマス・カーライルの書いた『衣装哲学』の中に《人が衣装を作り、衣装が人を作る》という言葉があります。
衣服をまとう唯一の動物は人間である。
人間の良さは魂を持っていることである。
衣服は魂を包むもの。すなわち服装は人間性を表現するものであることを示唆している。
だから衣服は「見かけ」が大事だと言っています。含蓄深い言葉です。