こうした「腹芸」とか「顔で笑って心で泣いて」というのは、自分の感情や思いを、簡単に表現するなどみっともない、という封建時代の、武士の心構えとしての思想に貫かれた日本人の伝統的な美学でもあります。
ひるがえって国際的な表現法はどうでしょうか。
腹芸は、《腹の探り合い》という形で、確かに世界に共通する大物といわれる人たちの間では、能力の闘いとして随所に見られます。
しかし、そうした世界の桧舞台で、日本人と異なるのは、「腹芸」と同時にあるいは先行して、「顔」や「体」での表現が活発であることなのです。そのうえでの腹芸なのです。
そのため、日本側から相手を見ると、真意をつかむのに苦労します。
日本のほうは「顔」や「体」で表現しなくても、思考しているのを分かって欲しいと相手の理解を求めるのです。
そんな日本人の対応を諸外国の人たちは、表に現れないことは無いこととして無視し、自国が有利なように運んでいきます。
その結果、政治上の取引でも、一歩先んじられたり、敗退を余儀なく迫られ、相手の国の思う壷にはめられてしまい、私たち国民を落胆させ、怒らせる結果を招き、政治における統率力、指導力も落ちてしまう結果になりがちです。
これは決して、他者に特種な政治の世界に限りません。一般生活の中でもまったく同じです。
他者に自分を対応させていくには、男性も女性も腹芸ではなく、生まれ持った表現を磨き、自分の思いと外見の表現を合体させていかねばなりません。自分を生かし、人を動かせる表現法を習得してください。
特に、政治家、経営者、弁護士、税理士、公認会計士、医者、美容師、エスティシャン、セールスレディ、セールスマン、ファイナンシャルプランナー、先生、塾の講師、会社における部長、課長、店長、主任、職業上人の上に立つ役職者には、表現法のマスターなくして、成功はあり得ないと覚悟が必要なほど大切なことです。
家庭という個人生活でも、「父親」「母親」としての存在感を示す表現力を持つことは大事になります。
また恋愛、友人関係、近所づき合いという中でも、表現の仕方によって、幸せをつかめたり、逃したりしてしまうことがあることを忘れないでください。