以前は「糖質抜き」と言われたこともあり、炭水化物を極端に減らした結果として栄養不足になり、やせたのはいいけど病気になったという例も見られました。
カロリーが不足するとそれを補うために、筋肉などの体の組織を分解して補うことになりますので、それはよくないことはすぐにお分かりになると思います。
また、不足分を脂肪食で補うと血液がドロドロになりやすく、いわゆる隠れメタボで様々な病気の危険を抱えることにつながります。
脳や全身に酸素を運ぶ赤血球ではブドウ糖のみがエネルギー源となりますので、これに必要な糖分は1日最低600キロカロリー以上になり、食事で摂る総カロリー量の約30%に相当します。
また、糖質はエネルギー源として即効性が高いため、不足するとガス欠状態となり元気が出なくなりますので、炭水化物としておにぎり1個程度は毎食取る必要があります。
日本人の食事摂取基準(2015年版)ではエネルギー比率で糖質50~65%、脂肪20~30%、タンパク質13~20%を勧めています。
短期間で体重を落とす必要がある場合には、糖質の比率を一時的に50%以下に落とす事はありと思います。
しかし、糖質制限ダイエットの長期的な健康に対する評価は定まっていないこともあり、長期間継続する場合も含めて医師や栄養士と相談しながら行うことをお勧めします。
もちろん、糖質の摂り過ぎも健康によくありません。
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」、バランスの取れた栄養摂取が大切です。
前回、糖質制限ダイエットを取り上げたところ、読者から「糖質でもお米はダイエットに良いのですね」と質問されました。
食後はじっとしていても体が温かくなりますね。
これは食事を摂ると体内に吸収された栄養素が分解され、その一部は体熱となって消費され食後は安静にしていても代謝量が増えるからで、これを食事誘発性熱産生と言います。
食事をよく噛んで食べることや朝食をしっかり食べることで食事誘発性熱産生は高くなるといわれています。
また、加齢や運動不足で筋肉が衰えると、基礎代謝だけでなく食事誘発性熱産生も低下しますが、運動によって筋肉を増やすと食事誘発性熱産生は高くなります。
食事誘発性熱産生は栄養素の種類によっても異なり、通常の食事は摂取エネルギーの約10%程度になりますが、たんぱく質のみでは約30%、糖質のみでは約6%、脂質のみでは約4%となっています。
この栄養素による差異が、糖質制限ダイエットの根拠の一つとなっているのです。
糖質についてはそれ以上分解されない単糖類であるブドウ糖や果糖(果物の糖分)、少糖類・オリゴ糖であるショ糖(砂糖の主成分)や麦芽糖、乳糖では、胃腸による消化の過程は少なくストレートに吸収されますので、食事誘発性熱産生は少なくなります。
一方、食物繊維の多い玄米やサツマイモなど多糖類が主体の炭水化物は、胃腸で消化・分解されてから吸収されますので、食事誘発性熱産生は高くなります。
そして、食後の血糖値の上昇も穏やかになり、糖尿病のリスクを軽減します。
この食物繊維は消化酵素では分解できないためエネルギー源にはなりませんが、腸で水分を吸収して便の量を増やすため便秘予防になりますし、善玉菌の餌にもなるので善玉菌が増えて腸の調子を整えます。
同じ糖質でも食物繊維の多いものをよく噛んで食べることはダイエットに繋がるのです。