【医師が解説】有酸素運動が”記憶力”を向上させる。(AGE100PRESS・人生100年時代協議会)

そろそろ暖かくなってきて、運動を始めようと思われている方もいらっしゃるかもしれません。 今回のテーマは『運動と記憶力』についてです。 また、有酸素運動についても解説していきます。
2020/03/10

記憶力、落ちていませんか?

最近、言われていたことをふと忘れてしまったり、

 

あれ?今何やろうとしたんだっけ?などという経験が増えている方はいませんか?

 

脳の中で、つい短時間前に起きたことを記憶しておく場所があります。

 

この場所は『海馬』と呼ばれています。

 

年齢や乱れた食生活、睡眠不足、ストレス、それに伴う脳血流低下、脳血管の動脈硬化などによって海馬は委縮することが考えられます。

 

そして脳細胞が変性し、βアミロイドというたんぱくが多量に沈着してしまうと、アルツハイマー病を引き起こします。

 

この記憶力、簡単な運動でアップすることができるとしたら素晴らしいと思いませんか?

短時間の運動で記憶力が上がる

2017年、筑波大学からこんな研究発表がありました。

 

Hippocampus誌に、『Acute Moderate Exercise Improves Mnemonic Discrimination ㏌ Young Adults』というタイトルで論文が掲載されたのです。

 

これによると、中等度の運動を10分行った後で記憶力テストを行ったところ、運動しなかった群に比べ、記憶力の向上が見られたというものです。

 

この場合の運動とはいわゆる有酸素運動というものです。

 

たかが10分ほどの運動で記憶力が上がるなら、今日からぜひとも始めてみたくなりますよね!!!

有酸素運動とは

効果的な運動量を測る目安

運動が健康に良いことはみなさんご存知のことと思いますが、ではいったいどの程度の運動が効果的なのでしょうか?

 

全力疾走を繰り返すような運動が心臓によさそうではない、ということはなんとなくわかると思います。

 

一方で、全く疲れを感じないような運動も効果は低いと言わざるを得ません。

 

では、その中間となる効果的な運動量とはどの程度の量を指すのでしょうか?

 

実は、その目安を測る方法があるのです。

 

それは『脈拍』です。

理想の脈拍

脈拍は心臓の疲れを一番よく知るバロメーターになります。

 

脈拍が速くなっているときはたいていの場合、体の中の酸素がかなり低下しています。

 

すると心臓も低酸素状態となり、心臓に悪影響を及ぼすという仕組みです。

 

では、その目安となる脈拍はいくつくらいでしょうか?

 

ここにある公式があります。

 

(220−年齢)×0.7

 

これが理想の脈拍と言われています。

 

例えば50歳の方であれば、

 

(220−50)×0.7=119

 

これくらいの脈拍を目安に運動を続ければ心臓は低酸素、無酸素状態にはなりません。

 

つまり有酸素の状態、これが有酸素運動なのです。

有酸素運動の大切さ

有酸素運動は、記憶力を上げるだけでなく、循環器の領域でもとても大切です。

 

生活習慣病と呼ばれる高血圧や糖尿病、コレステロールや中性脂肪の改善、ダイエットなどによる体重コントロール。

 

それだけではありません。

 

有酸素運動は心臓発作の可能性をも大幅に減少させてくれます。

 

それは心筋梗塞や狭心症などの発作予防はもちろんのこと、すでに発作を起こした経験がある方の再発予防にも非常に大事なのです。

 

ただ、一つ大切なことがあります。

 

それは有意義な運動は『有酸素運動』である、という点です。

 

運動を始めると、往々にして楽しくなって、または頑張りすぎて有酸素運動以上の運動をしてしまうケースがあるのです。

 

いわゆる『無酸素運動』です。

 

無酸素運動は体の中に活性酵素を多く作ることで、運動が逆に仇になってしまいかねませんので、注意が必要です。

 

暖かくなって運動がしやすい季節になりました。

 

適度な運動を心がけてみてはいかがでしょうか。