私が最初にパク教授と会ったのは、1985年の暮れでした。
その頃、私はすでにキム式速読法を学んでいて、教室を開設していたのですが、その内容に疑問を持ち、韓国に調べに行ったことがきっかけでした。
そのとき、本物の速読がソウル大学校で教えられていたことを知り、その関係者を探して、パク教授と一緒に訓練プログラムの開発と指導に当たっていた、実弟の朴文燁(パク ムンヨップ)氏に会うことができたのです。
そのときは、パク教授がブリティッシュコロンビア大学に留学していたときで、年末に一時帰国したときに会うことができました。
空港に迎えにきてくれたパク教授は、学者らしい穏やかな雰囲気を漂わせながらも、とても暖かさを感じさせる方でした。
私は、一目でこの方なら信頼できると思いましたし、パク教授も私をそう思ってくれたようでした。
パク教授は、私に全面的に協力することを約束してくれました。
そして、1986年の6月から8月初めまで日本に滞在して、最初の「速読脳」開発セミナーを開催することになったのです。
彼の「読書能力開発プログラム」とその教授法を教えてもらいながら、私が持っていた潜在能力開発法のノウハウを合わせて、当時の最新のプログラムを作り上げ、私がその講義を担当して実施していきました。
終了後は、その結果について二人で検討することの繰り返しでした。
今振り返ると、最高に充実した時間でした。
その結果でき上がった教本の前書きには、あのときの私たち二人の熱い思いが、次のような文で記されています。
「私たち人間は、すばらしい可能性を持った生き物です。なぜなら、その可能性を自ら開拓していく能力を持っているからです。
このテキストを通じてあなたに提供する『科学的速読法』は、私たちの持つ、そのすばらしい可能性を引き出し、しかもそれを開拓する能力をも同時に高める強力な訓練法です。
あなたは、この訓練によって、あなた自身を未来人類へと進化させる第一歩を踏み出すことになるでしょう。
ここに提供する『科学的速読法』の訓練は、朴のこの研究成果に、佐々木の心身両面にわたる能力開発法の研究成果を加味し、最新の訓練法として創り上げたものです。
皆さんは、単なる速読法の域を越えるその効果に、きっと驚かれることと思います。
著者らは、二人の協力により、この『科学的速読法』を、世界最高水準の速読法であるという自負と誇りをもって、日本の世に問えることを、心から喜びとするものです。・・・」
パク教授は、1987年に帰国し、清州師範大学(のちに西原大学校)で研究を続け、1989年3月からは「速読理論と実際」という新教科が採択され、教鞭を取り続けました。
2007年2月、パク教授は定年となりましたが、今も非常勤で、西原大学校やソウル大学校で教えています。