【毎分10万文字・誰でもできる速読脳トレーニング】10.パク教授との出会いと、日本での進展

この後、パク教授は自身の専門である教育学、認知心理学、読書心理学を深めるために、アメリカの南カリフォルニア大学に留学します。もちろん、欧米の速読法の事情を調査することも目的としていました。続いて、カナダのブリティッシュコロンビア大学に、さらに読書心理学のメッカであるシラキュース大学に留学して、1987年に帰国します。
2020/03/26

パク教授との出会い

私が最初にパク教授と会ったのは、1985年の暮れでした。

 

その頃、私はすでにキム式速読法を学んでいて、教室を開設していたのですが、その内容に疑問を持ち、韓国に調べに行ったことがきっかけでした。

 

そのとき、本物の速読がソウル大学校で教えられていたことを知り、その関係者を探して、パク教授と一緒に訓練プログラムの開発と指導に当たっていた、実弟の朴文燁(パク ムンヨップ)氏に会うことができたのです。

 

そのときは、パク教授がブリティッシュコロンビア大学に留学していたときで、年末に一時帰国したときに会うことができました。

 

空港に迎えにきてくれたパク教授は、学者らしい穏やかな雰囲気を漂わせながらも、とても暖かさを感じさせる方でした。

 

私は、一目でこの方なら信頼できると思いましたし、パク教授も私をそう思ってくれたようでした。

 

パク教授は、私に全面的に協力することを約束してくれました。

 

そして、1986年の6月から8月初めまで日本に滞在して、最初の「速読脳」開発セミナーを開催することになったのです。

 

彼の「読書能力開発プログラム」とその教授法を教えてもらいながら、私が持っていた潜在能力開発法のノウハウを合わせて、当時の最新のプログラムを作り上げ、私がその講義を担当して実施していきました。

 

終了後は、その結果について二人で検討することの繰り返しでした。

 

今振り返ると、最高に充実した時間でした。

 

その結果でき上がった教本の前書きには、あのときの私たち二人の熱い思いが、次のような文で記されています。

 

「私たち人間は、すばらしい可能性を持った生き物です。なぜなら、その可能性を自ら開拓していく能力を持っているからです。

 

このテキストを通じてあなたに提供する『科学的速読法』は、私たちの持つ、そのすばらしい可能性を引き出し、しかもそれを開拓する能力をも同時に高める強力な訓練法です。

 

あなたは、この訓練によって、あなた自身を未来人類へと進化させる第一歩を踏み出すことになるでしょう。

 

 

ここに提供する『科学的速読法』の訓練は、朴のこの研究成果に、佐々木の心身両面にわたる能力開発法の研究成果を加味し、最新の訓練法として創り上げたものです。

 

皆さんは、単なる速読法の域を越えるその効果に、きっと驚かれることと思います。

 

著者らは、二人の協力により、この『科学的速読法』を、世界最高水準の速読法であるという自負と誇りをもって、日本の世に問えることを、心から喜びとするものです。・・・」

 

パク教授は、1987年に帰国し、清州師範大学(のちに西原大学校)で研究を続け、1989年3月からは「速読理論と実際」という新教科が採択され、教鞭を取り続けました。

 

2007年2月、パク教授は定年となりましたが、今も非常勤で、西原大学校やソウル大学校で教えています。

「速読脳開発プログラム」の日本での進展

1986年6月から1ヶ月半にわたって開催された、日本で初めての「速読脳」開発セミナーでは、2名が速読できるようになりました。

 

しかし、たしかに授業で教える内容は段階的でしたが、受講生がいつ速読の領域に入るのかは分からない教え方でした。

 

文字を読み取っていくことやその集中の程度は、主観的であり、一人一人異なっています。

 

そのようなトレーニングの成就度と、どの段階で「速読脳」が開いてくるのかについては、深く関係しているはずですが、当時はそれが掴めない教え方でした。

 

たしかに期間が短かったことはありますが、そのままの教え方では、できる人はできるが、できない人はできないで終わってしまいかねません。

 

この教授プログラムでは、当時のソウル大学校のように集中力に優れた学生が集まっている授業なら大きな効果を発揮するでしょうが、民間の教室では教えていくことはできないと、私は危機感を覚えました。

 

日本では、速読はほとんど知られておらず、まだ海のものとも山のものとも社会の判断がついていない時代だったからです。

 

訓練しさえすれば、ほとんどの人ができるようになる教授プログラムにならないと、信用を失うのではないかと危惧したのです。

 

私は、次の4つの課題があると考えました。

 

① 段階的に習得できる教育課程を作ること

 

② 高速理解能力を開発する課程を作ること

 

③ 脳科学的に「速読脳」を明らかにすること

 

④ 習得率を上げること

 

この4つの課題を解決することが、パク教授から「読書能力開発プログラム」を受け継いだものの責務だと思いました。

 

しかし、当時の私には、どれも雲の上の課題に見えたものでした。