「Reading Rate」という速読法に関する研究と理論をまとめた本がありますが、そのなかで、著者のR.P.Carverは、 読書速度を上げると理解度が下がるだけだと、速読法をこき下ろしています。
それが、従来の速読法に対する評価だったわけです。
それだけ、速く読書できるようにすることは、簡単ではなかったということです。
速度を上げることについて、アナロジー(類似の例)で考えてみましょう。
たとえば、仕事の速度を上げることを考えます。
皆さんの周囲にも仕事の早い方と遅い人がいると思います。
遅い方は、準備に気がまわっていなかったり、仕事に集中していなかったり、落着きがなかったり、雑念が多くて仕事に不注意だったりします。
その結果、仕事の運びが遅いだけでなく、ポカミスが発生し、その修正に時間を取られます。
逆にいつも、仕事が早い方は、集中力があり、いわゆる頭の回転(情報処理速度)が早く、落ち着いていて気が上がらず、広い視野で総合的判断ができ、ポカミスも少ないのです。
つまり、仕事が早い方のいうのは、単に頭の回転が速いとか、手の動きが速いとかというのではありません。
優れた集中力や冷静さ、広い視野、判断力、自己観察力(気づく力)などが伴っているのです。
このことを、速読に当てはめると、眼球を速く動かすだけでは、速く読めるようにならないことが納得できると思います。
集中力や落着き、記憶力、頭の高速情報処理、広い視野、そしてこれらをコントロールする力などの能力に優れていて初めて速く読めるのです。
速く読んでいるかどうかは外から見えますから、速読力の表面的な力です。
しかし、集中力や落着きなどは外から見えませんが、読書を内部から支えている内面的な力です。
これらの内面的な力は、学習基礎力と呼ばれます。
「速読脳開発プログラム」で、10万字/分もの速度で読書できるようになるのは、単に文字を順に素早く読み取っていく能力だけでなく、集中力などの学習基礎力を、一緒に飛躍させるからです。
これらの学習基礎力を一緒に開発しなければ、速読能力を開発することは困難です。
ですから、眼球の動きだけを変えようとしたアメリカ式速読法は、速読能力を向上させるものにならなかったのです。