もし、老眼や眼の障害があって、文字に次々と焦点を合わせることが困難だとしたら、文章を読むのが遅くなり、理解するのも不自由になります。
同じく、文字の記憶を蓄えている脳の部位から、記憶情報を取り出す作業が障害を受けていたら、理解にも速度にも障害が生じます。
ですから、読書行動の最初の段階で行われる文字に焦点を合わせる作業や文字を認識する作業も、理解に至る一連の作業のひとつなのです。
この意味で、これらの作業能力は、2つ目の理解能力と言うことができます。
実際、この作業がうまくいかないとき、本人は、「読むことに集中できない」とか「内容が頭によく入らない」などと、理解力の問題と意識されます。文字の認識がうまくできないとは意識しないのです。
しかし、私が教室で指導してきた経験から言うと、文字の認識作業がうまくできている人は、少ないと思います。
その作業は無意識的に行われているため、本人が気がつかないだけで、文字を次々と読み取っていく能力が低いために、文章の理解がうまくできない方は多いのです。
もちろん、読む速度は遅くなります。
文字を次々と読み取っていく能力は、読書の基礎能力です。読書速度にも理解能力にも影響を及ぼしている基礎能力です。
にもかかわらず、記憶や思考に直接的に関わっている知識を扱う作業ではないため、従来、理解力と無関係と考えられてきました。
しかし、文字を次々と読み取る作業がスムーズにいかなければ、文章の内容を理解することもスムーズにいきません。
このことは、文字を次々と読み取る作業が、理解力の発達に大きな影響を及ぼしていることを意味しています。
私が速度力と言うのは、この文字を次々と読み取る能力のことです。
ですから、速度力が、理解力を発達させる大きな要因なのです。