【毎分10万文字・誰でもできる速読脳トレーニング】17.速度力を伸ばす

文字を次々と読み取っていく能力が、実際に発揮できている能力と潜在的に持っている能力では、大きな差があることを指摘しました。しかし、振り返ってみると、文字を見る能力をトレーニングしていないのですから、当然と言っていいように思われます。
2020/04/04

文字を読み取るトレーニング

たとえば、自動車は、ハンドルとアクセルとブレーキが分かれば、誰でも動かすことができます。

 

しかし、慣れていませんから、いつ塀や電信柱にぶつかるかもしれず、おそるおそる運転することになります。

 

走る速度は、せいぜい時速10キロ程度でしょう。

 

つまり、自動車が持っている走行能力は潜在したままで、引き出すことができないわけです。

 

しかし、教習所に行って、運転の仕方を習得すれば、時速100キロで走ることは、誰にでもできることです。

 

運転の仕方を身につけることで、自動車の持つ走行能力をそのまま引き出すことができるわけです。

 

そのときの速さは、桁違いになります。

 

一方、読書について考えてみると、書かれている文字は分かりますから、誰でも読むことができます。

 

書かれている内容も多くは理解できるので、「自分は読書できている」と思い、これを疑うことはないはずです。

 

しかし、このレベルは、自動車の運転で言えば、その基本であるハンドルとアクセルとブレーキの使い方を知っただけと同じです。

 

本も自動車と同じく、人工的に作られた道具です。道具を使うというのは、道具と一体となることです。

 

ハンドルのまわし方を知り、アクセルとブレーキの踏み方が分かっただけでは、それらを意識的に考えながら操作することはできますが、自動車と一体となっていません。

 

一体となるということは、瞬間瞬間で変化していく自動車の置かれた環境を、考えることなく、自動的に手足を動かして運転できることです。

 

目や耳から入ってくる、自動車の環境情報に適応して、適切に判断し、ハンドルなどの運転装置を自動的に操作できることです。

 

読書でいえば、さまざまな文字がランダムに並んでいる行と、その行が長さもさまざまなまま並んでいるページを、眼が自動的に文字を追って読み取っていく機能が自分の中に出来上がっているかということです。

 

ほとんどの方は、そのような機能が自分の中にないと認めざるを得ないと思います。

 

これが、私の言う「文字を読み取るトレーニングをしていない」という意味なのです。

 

ましてや、理解する機能についてトレーニングする機会は、ほとんどないと言っていいでしょう。

「速読眼」で文字を読み取る

読書している方は、読書するとき文字を追っているわけですから、文字を読み取るトレーニングをしていると思いがちです。

 

しかし、読書しているだけでは、ほとんど、「文字を読み取るトレーニングをしていない」に等しいのです。

 

読書するときは、トレーニングをしていようがいまいが、文字を順に追っていきます。

 

ですから、読書中の目の動きはトレーニングをしたかどうかに関係なく、同じではないかと考える人もいると思います。

 

しかし実は、そうではないのです。

 

図3-Aに、共同研究で測定された読書しているときの眼の動きを示します。

 

この図は、特にトレーニングをしていない人の測定結果です。

 

縦書の文章を読んだときの動きですが、装置の都合上、図の下側が実際の行の上側に表示されています。

 

横軸は時間の経過を示しています。

 

図3-Aの縦方向の短い棒線が飛越運動、横にずれて段差として見えるのが停留、上から下絵の長い棒線が行間運動です。

 

では、「速読眼」が開発された人の目の動きはどうなっているでしょうか。

 

図3-Bに、その測定結果を示します。

 

この図は、およそ1万字/分位の速度で読んでいるときの眼球運動です。

 

上下方向の動きがとても小さくなっているのが分かります。

 

同じ文章を読んでいる普通の人の目の動きが、図3-Aですから、比べるとずいぶん小さな目の動きです。

 

これで、行の上から下までの全部の文字を読み取ることができるのでしょうか。