なぜかというと、心の中の動きを直接測定できないからです。
視野が広がっていることは、客観的に示すことはできますが、それはあくまでも、間接的な実験結果からの推測です。
つまり、たとえば「視野の端っこに書いていることを、視野の真ん中に書いてあることと同じ確率で、正しく言い当てている」という実験事実から、「視野の端っこも読み取れている、だから視野が広くなっているに違いない」と推測するわけです。
一般に「視野が広い」という言い方をしますが、ほとんどの方はその実体験がないために、その具体的な内容についてピンと来ていません。
明確な言い方をするなら、視野が広いということは、
第一に、焦点の合っている範囲(焦点範囲)が広いということ、
第二に、その広い焦点範囲のなかの見たいところどこにでも、見たいという気持ちをピンポイントで持っていくことができる、
ということです。
つまり、このとき、目線の位置と見ている意識の点(視点)の位置は、異なっているのです。
ですから、眼球の動きを測定しても、実際に見ているところの動きを測定していることにはならないわけです。
というわけで、読んでいる意識の動きは、目の動きを直接的に測定したとしても、科学的に証明するのは困難です。
ここに、「速読眼」の研究の難しさがあるのです。
このような事情を踏まえたうえで、ここでは、主観的に言いますが、「速読眼」には、次の2つの特徴があります。
① 文字を次々と見ていく能力として、1分間に1万字以上を見ることができる、
② 行の上から下までが、焦点範囲の中に入っていること、
です。
①については、潜在的に持っている能力が52500字/分であることを説明しましたので、可能性を納得していただけると思います。
しかし、②についてはどうでしょうか。
焦点範囲というのは、読書心理学で言う認知スパンに相当します。
普通、認知スパンは4〜5文字程度とされているのですが、本当に1行全体が入るほど広がるのでしょうか。