【毎分10万文字・誰でもできる速読脳トレーニング】24.「速読脳」で集中力が飛躍する

哲学者の三木清は、その著書「読書と人生」のなかで、「落ち着いた大学生といわれる者は、たいてい読書の習慣を有している」と述べています。読書をすることで、落着きが養われるとは、一般的に言われるところです。また、読書中は瞬きが少なくなるという研究結果も知られており、読書によって集中力が高まると考えられています。
2020/04/15

「速読脳開発プログラム」は集中力を開発する

このような読書ですから、それを速い速度で行おうとすれば集中せざるを得ないことは、読者の皆さんも体験していることと思います。

 

確かに速く読もうとすれば、集中することになります。

 

その結果、実際少し速く読めるし、それを繰り返すことで、集中力も少し身についてくると思います。

 

しかし、それで「速読脳」が開発できるかというと、できないのです。

 

集中力を高めることは、「速読脳開発プログラム」の要です。集中力無しには、

 

「速読眼」も「速読脳」も開発することができません。

 

しかし、その集中力は、速く読もうと焦った気持ちで発揮する集中力ではないのです。

 

よく言われるように、よい集中とは、「リラックスした集中」です。焦ることは緊張することです。

 

「緊張した集中」の意識状態では、速く読もうとすればするほど、緊張が高まり、疲れるだけです。

 

それでは「速読脳」を開発することはできないのです。

 

2章で、「速読脳開発プログラム」で達成される速読は、テクニックでできるものではないと説明しました。

 

テクニックで速く読もうとするのは、焦る気持ちがあるからです。ですから、テクニックで速く読もうとしたとき、一時的に速く読めたとしても、リラックスした集中状態に入ることはできず、読書能力の開発につながらないのです。

 

読書能力を向上させるためには、「リラックスした集中」が不可欠です。

 

ましてや、読書能力を高度に開発した「速読脳」を身につけようとするなら、「リラックスした集中」を自在に使えるようになる必要があるのです。

 

逆に言えば、「速読脳」を開発した人は、リラックスした集中も、身につけているということです。

 

ここに、「速読脳」を開発した人の能力があらゆる面において飛躍する理由のひとつがあるのです。

「リラックス集中」の向上を立証

2004年3月に、TBSの人気番組「世界バリバリ*バリュー」に「速読脳開発プログラム」が取り上げられました。

 

20代のタレントさん2名(男性)をトレーニングして「速読脳」を開発するという趣向です。

 

3週間、集中的にトレーニングするということでしたので、ついでに、その経過を脳波で測定させてもらうことにしました。

 

一緒に研究してくださったのは、日本医科大学情報科学センター(当時)の河野貴美子先生です。

 

リラックスした集中力の変化は、安静にしているときと、クラシック音楽を聴いているとき、暗算しているときの3つの場合について、調べました。

 

いずれも、脳波に顔の表情筋の影響が出ないように、目を閉じた状態で測定しました。

 

リラックスの程度は、右脳後頭部のアルファ波の平均振幅値で、また集中の程度は、右脳の前頭と後頭間のアルファ波の位相のずれの大きさでチェックすることができます

 

トレーニング前と、2週間後、3週間後の3回測定して比較しましたが、結果は、二人とも、毎回アルファ波の平均振幅値が大きくなり、かつ前頭と後頭のアルファ波の位相のずれは小さくなり、トレーニングが進むにつれて、リラックスがより深まり、集中が高まったことが示されました。

 

わずか3週間のトレーニングでしたが、リラックスした集中が強化されたことが示されたわけです。

 

ちなみに、この時の研究では、7章で説明した音声化に関係するウェルニッケ野の活動が、トレーニングが進むにつれて低下すること、そして逆に、イメージ力に関係する右脳後頭部は活性化していくことが分かりました。

「速読眼」は視覚集中力を強化する

「速読脳」が開発され、10万字/分もの速度で読むようになると、その読む姿は、美しさを感じさせると同時に、言い知れぬ迫力が備わったものになってきます。

 

集中している目には、眼光が感じられ、顔は穏やかで深みのある表情をたたえているように見えます。

 

このような変化は、内面的には自信や不動心が養われてきた結果と思われますが、直接的には集中力の大きな変化によるものと推測しています。

 

読書中の一般的な眼球運動については前に示しましたが、停留と飛越運動を繰り返しています。

 

停留で文字を読み取って理解するわけですが、飛越運動では、その集中が途切れるか大幅に低下すると考えられています。

 

この集中の途切れ、または低下は、サッケード・サプレッションと呼ばれています。

 

前章で、「速読眼」を開発することは、焦点範囲を広げることだと説明しましたが、それは1回の停留で読んで理解する文字数が多くなることを意味しています。

 

その結果、停留の数は少なくなくなります。

 

飛越運動は、停留と停留の間の眼球運動ですから、停留が少なくなると、飛越運動も少なくなります。

 

飛越運動が少なくなると、読んでいる途中の集中の途切れ、すなわちサッケード・サプレッションも少なくなるわけですから、停留での集中が維持されやすくなると考えられます。

 

このようにして、「速読眼」の開発が、このサッケード・サプレッションの減少をもたらし、集中レベルの深化、集中力の向上につながっていると推測しています。

 

「速読脳開発プログラム」は読書能力を向上させるものですから、視覚を通したトレーニングで集中力を養います。しかし、その集中力は視覚を用いる集中力に留まらず、五感すべてについての集中力で強化されるようです。

 

たとえば、聴覚を用いる、英語のヒアリング能力が急に伸びたとは、多くの受講生が言うところです。

 

また、お料理の先生は、味覚が鋭くなっただけでなく、味覚のイメージ力が強化され、レシピを読むとそのお料理の味が分かるようになったと喜んでいました。

 

このようなマルチとも言える集中力が養われるのは、集中する意識面から改善されるためと思われます。

時間・空間を超える集中力

「集中が深まると、時間感覚が変化する」とはよく言われることです。あるいは、「客観的な時間の流れのほかに、主観的な時間の流れがある」とも言われます。「速読脳」が開発されると、時間の流れが変わるのを感じます。

 

一説によると、時間の流れの感覚は、イベント(出来事、したこと)が集積した結果生じるとのことですが、「速読脳」による読書では、わずか数分の間に本一冊分の情報が集積されます。

 

従来の時間感覚ではずいぶん長い時間をかけたように感じるわけですが、客観的な時間を示す時計は、本の数分しか進んでいないということが起こります。

 

これを体験すると、とても驚き、感動します。

 

もちろん、能力が定着する頃には、その体験が何度も繰り返されていますから、慣れて当たり前になるのですが。

 

そしてまた、1章で示した体験談でも述べられているように、本に描かれている場面の中に入り込んだ感覚で読むことも起こります。その体験談を紹介しましょう。

【体験談】

これはある時、とてもよい集中状態に入ったときに起こったのですが、一般書を読んでいた時に、まるで自分が、映画の中に入ってしまったかのようになったのです。

 

そこでの文章、言葉のやり取りが、立体的に行われているとでも言うのでしょうか、自分の隣で、本の中の登場人物たちが動き、会話をし、すっかり物語の中に自分がいるのです。時間も空間もなくなったような、とにかく「うわぁー!!」という感じで、あまりにも感動し、涙が出そうになりました。

 

(H.H. 女性)

時間・空間を超える読書

このような理解体験は、「時間・空間を超える読書」ということができるのではないでしょうか。

 

もちろん本の内容によってすべての本がこのような理解で読めるわけではありませんが、「速読脳開発プログラム」によって開発される集中力は、このような読書を可能にするのです。