しかし、この主張は「速読脳開発プログラム」によって開発された「速読脳」には当てはまりません。速読テクニックで2、3倍速く読むことと、「速読脳」を開発して10倍、20倍の速度で読むこととは、まったく異なることなのです。
このことについてはすでに述べました。
ある受講生は、渡された書類を手渡される合間に読んでしまったそうです。
内容はよく分かったので、そのまま次の人に渡したら、その書類を持ってきた上司に、「きちんと読め!」と叱られたとのこと。
「速読脳」については一般にはよく知られていないため、伺い知れぬものがあると言っていいでしょう。
「速読脳開発プログラム」には、「3万字の法則」と呼んでいる興味深い現象があります。
勤めている方は、なぜか、読書速度が3万字/分に到達すると、栄転するとか、役職が上がるとか、変化が起きるのです。
もちろん、ただ仕事がたくさん来て忙しくなるだけという方もいるのですが、それも、大きな変化です。
ですから、3万字/分を超えても、教室に通える時間を確保するようにと、私は冗談めかしながら受講生の皆さんに注意します。
地方から、月に1日だけ、1デイセミナーに通ってくるAさんという受講生がおりました。
50才弱の立派な紳士なのですが、トレーニングは焦って慌てるばかりで、なかなか指示通りにできません。
初日を終えてから、もう一度、個人的に「速読脳開発プログラム」の意味を説明したところ、頭では理解していても、それを実行できないと言います。
それでも、以後、休むことなく毎月、熱心に通ってきてくれました。
そして、3年ほど経った時、「この度、支店長になりました」と、笑顔で報告してくれました。
丁度、読書速度が3万字/分を超えた直後でした。
あとで聞いたところによると、Aさんは仕事で大きなミスを犯し、左遷されて時間ができ、それで当教室に通うようになったとのこと。
新たに着任した支店は、会社の中でも重要な支店で、仕事に失敗して一旦昇進のコースから外れたのに、もとのコース以上の地位に戻ることができたとのことでした。
もちろんAさんが、とても落ち着いた人に変身していたのは言うまでもありません。
「速読脳開発プログラム」で得られる成果は、単に速く読めるようになるだけではないことがお分かりいただけたと思います。能力を変えることは、内面を変えることです。
内面が変わらないままできるなら、それはテクニックです。「能力を変えようとするなら、その能力にふさわしいように、自分自身を変えることが必要だ」と、私は、常々、受講生の皆さんにお話しています。
仕事は、素早く、正確にこなしてくれる人のところに多く集まるものです。
そのような人は、落ち着いているし、頼っても大丈夫という雰囲気を醸し出しているものです。
周囲に速読のことをまったく話さなくても、「私は仕事を早く正確にこなすことができます。
頼ってくださって大丈夫ですよ」という落着きと自信に満ちた雰囲気を自然に発するようになるのが、なぜか3万字/分という読書速度を達成した訓練段階なのです。