家族葬を選んだ家族に起こったこと
家族葬と言われてピンと来ない人もまだ多い。
家族葬は比較的新しい見送り方で、マナーについての周知が遅れている。(画像出典:photoAC)
長く患っていたお母様が亡くなった、あるご家族の話です。
仮にA家としましょう。
A家では、病魔に晒された姿を他人に見せたくないという故人の望みがあったこと、長期間の付き添いで家族にも疲れが溜まっていたことなどもあり、これ以上の負担がかかるのを避けるために家族葬を選びました。
葬儀の後は自宅で親族と過ごす時間を作ることにして、地元の小さな葬儀社にシンプルなプランを依頼。
ご近所へは、「家族葬で送りますので参列はご遠慮ください」と、町内会長へ伝えて周知をお願いしておきました。
家族葬とは、
『家族葬=家族・親族のみで行う葬儀』
だと思って選んだスタイルなので、こう伝えておけば誰も来ないだろうと安心していたのです。
しかし、家族葬という言葉を聞き慣れない人もいたために、
「家族だけで見送ると言っても挨拶もしないわけにはいかない」「葬儀の後に自宅に戻られるんだろうから、直接行こう」
という声が上がり、お母様と仲良しだった近所の友人たちが連れ立って訪問してしまいました。
弔問客用の準備を全くしていなかったA家は大慌てです。
いずれ町内を代表して会長に弔問してもらおうと考えていた人達からは、「勝手なことをして」と、友人たちが怒られる事態に発展。
この場合、遺族は、友人たちは、どうするのが正しかったのでしょう?
家族葬を行う際に、誤解を生まない伝え方は?
家族葬であることと、参列や弔問などの要望についてはっきり伝えること。
曖昧な伝え方は誤解を生む。何を受け入れて何を受け入れないかを明確に。(画像出典:photoAC)
周囲に訃報を伝える時は、まず家族葬であることを伝えます。
葬儀に呼びたい相手には、葬儀の日時を伝える際に、参列して欲しい旨を添えれば大丈夫です。
難しいのは呼ばない相手に対してですが、訃報の連絡は通常通り行いましょう。
その上で、相手が納得できるように、「少人数で行うことにした」「故人の意思で、一般的な葬儀を行わないことにした」など、理由を添えつつ、「参列はご遠慮ください」ときちんと伝えることが大切。
訃報を伝える相手が多い場合は、葬儀社であらかじめ用意されている通知の文例があればそれを活用し、電話で伝える相手とハガキで伝える相手とを分けても良いかもしれません。
葬儀の参列だけでなく、
弔問や香典、弔電を辞退したい場合にも、きちんと文面で伝えておく
ことが望ましいでしょう。
そうすれば、問い合わせの電話が続いたり、突然の弔問客に慌てるような事態を避けられます。
家族葬とは、どんな見送り方をする葬儀なの?
基本は一般的な葬儀とほぼ同じ。異なるのは親しい人のみで行う点。
故人の思い出を語り合える間柄の人だけで見送る、という考え方が基本。(画像出典:photoAC)
家族葬の見送り方は、基本的には一般的な葬儀とほぼ同じ流れになります。
大きく異なるのは、
血縁関係のみ、または、ごく親しい間柄である人のみで葬儀を行う点。
家族や親友など、親しい人たちだけで故人をゆっくりしのぶことができるため、近年は家族葬が選ばれることも増えつつあります。
参列者が少なく規模が小さくなれば、会場もひとまわり小さな場所で足りますから、会場費をはじめ、スタッフの人数、用意する食事などにかかる費用を抑えることもできます。
ただ、規模が大きな葬儀の場合にはいただいた香典を費用に充てることができるのですが、参列者が少ない場合は自費で支払う割合が大きくなるため、あらかじめ予算を組んだ上でプランを選ぶと良いでしょう。
参列者が一人であっても家族葬はできますから、人数を気にする必要はありません。
時間や気持ちに余裕があるうちに、家族葬に対応している葬儀社や、それぞれのプランをチェックしておくことも大切です。
「家族葬です」と言われた側は、どうすればいい?
参列して良いかどうかは、参列をお願いされるかどうかで判断を。
「ご遠慮ください」と言われたら、参列や弔問は控えたい。(画像出典:photoAC)
一般的な葬儀の場合、参列の許可を誰かに確認する必要はありません。
しかし家族葬は違います。
故人との関係性を重視して、参列できる人をある程度まで限定するのが家族葬の特徴。
ここが少々難しいのですが、
血縁関係のみで行う場合もあれば、婚姻関係を結んでいないパートナーや親しい友人が呼ばれる場合もあり、特に決まりがあるわけではありません。
参列して良いかどうかは、「参列していただけますか」と声を掛けられたかどうかで判断します。
声をかけられたなら血縁関係でなくとも参列して大丈夫ですが、「ご遠慮ください」と言葉が添えられている場合は、参列や弔問を遠慮するのがマナーです。
確認なしに弔問すれば、A家のように遺族を戸惑わせることになりますから、必ず少し時間を置いて、葬儀の慌ただしさが落ち着く頃まで待ってから、弔問、もしくは墓参しても大丈夫かの確認を取りましょう。
「どうしてもお悔やみを伝えたい」そんな時はこうしよう
少し時間を置くこと。家族葬を選んだ遺族の気持ちを大切に。
故人との思い出は自分の中にちゃんとある。(画像出典:photoAC)
時折、「どうしても参列したい」と、電話をかけてお願いする人もいるようですが、慌ただしい葬儀の最中に電話対応をさせるのは、遺族の負担になりますから控えましょう。
お悔やみを伝えたい気持ちを我慢するのは辛いかもしれませんが、ご遺族の気持ちを優先し、弔電でお悔やみを伝えるくらいにとどめておく方がお互いの気持ちに波風を立てずに済むのではないでしょうか。
お悔やみを伝える目的のひとつは遺族を慰めるためでもあり、辞退されている状況で無理に伝えるよりは、間を置く方が良い場合もあります。
ただ、友人・知人との別れに対して葬儀という区切りを得られないがために、辛さを感じる人もいるかもしれません。
もしも自分の気持ちを落ち着かせたい時は、故人を知る共通の友人と思い出を語り合う場を持ってみましょう。
互いの思い出を分け合う体験が、慰めをもたらしてくれることもありますよ。
一般的な葬儀では崩せない流れがあり、宗派ごとの決まりごとやマナーに沿った対応が求められますが、そういった決まりに囚われすぎないのが家族葬の良いところ。
葬儀の手順に時間を押されるような慌ただしさから少し離れ、故人との思い出を大切にしながら過ごせる葬儀の形と言えるでしょう。
A家のような混乱を招かないためにも、家族葬という新しい見送り方のマナーについて、心に留めておきたいですね。