「火葬場」と「斎場」はどう違う?
(出典:photo AC)
「火葬場」が何を行う場所かはすぐに分かりますが、「斎場」と言われるとピンとこない、という人も少なくないようです。
まず最初に、火葬場と斎場、葬儀場の違いを簡単にご説明しましょう。
斎場とは、端的に言えば葬儀を行う場所のこと。では葬儀とは何かと問われると、「葬式と同じ意味」と解説する文もあれば、「葬式には告別式も含まれるが、葬儀には含まれない」とした文もあり、解釈はまちまちです。
斎場を「火葬場を併設した葬儀場」と説明しているものあって解釈の違いが大きいため、今回の記事内では北九州市西部斎場の施設内容に沿い、以下のように説明させていただきます。
葬儀場:祭壇があり、通夜、葬儀、告別式を行う。火葬の機能を持たない。
斎 場:火葬場を有する施設。祭壇を持たない。
火葬場:火葬するための施設。
お話を伺った北九州西部斎場は公的施設です。
設備上は火葬と葬儀いずれも執り行うことが可能ですが、祭壇や仏具等の準備がないため葬儀を行う場合は必要なものを持ち込むことになります。
複数の民営斎場が展開される一部地域を除いて、火葬は、故人もしくは家族親族が居住している地域の公営斎場に依頼するのが一般的です。
火葬場の予約は、どのような流れで決められるの?
ご遺体を火葬するには、火葬場の予約を取り、予定の日時に斎場・火葬場へ向かいます。そこで最後のお別れをして焼骨、拾骨、そして帰宅となります。
その日の火葬の順番が決められる手順や流れから、お話をお聞きしました。
仰倉:初めまして。ご多忙の中お時間いただきましてありがとうございます。最初に、火葬場の予約システムについてご説明いただけますか?
場長:初めまして。こちらこそ、どうぞ宜しくお願い致します。
当斎場の場合ですと、前日の深夜0時までに葬儀社からパソコンで仮予約を取っていただくことになっております。
予約をお取りいただける時間は、通常は朝9時から午後3時まで。お休みである友引の翌日(※1)は申し込みの数が増えますので、午後4時まで時間を延長しております。
(※1:友引は六曜のひとつで、忌事を避けるとされている日。ほとんどの火葬場では、この日を休日としている)
仰倉:今はオンラインで予約をするのが一般的ですか?
場長:そうですね。インターネットから希望される時間の枠内で仮押さえをしていただいて、必要事項を記入した予約票をファックスで送信してもらいます。電話でのやり取りなどを通じて確認を進め、内容に問題がなければ画面上に本予約の入力をして決定となります。当斎場では1時間に5件まで受け付けています。
仰倉:必要事項とは、どのような内容なのでしょう?
場長:亡くなった方のお名前や年齢、仏式かキリスト教式かなどの葬儀様式、それから希望される時間帯や出棺時間などですね。ペースメーカー等お体に埋め込むタイプの医療機器の有無(※2)や、感染症がある場合にはそれも記載していただきます。
仰倉:2020年春以降、新型コロナウイルスが出現しましたが、この場合はどのように対応されるのでしょう?
場長:亡くなった方が新型コロナウイルスに感染していた場合は、「死体埋葬・火葬許可証」に「一類感染症等」と記載されます。通常は死の判定から24時間が経過しなければ火葬できないと法律で決まっていますが、新型コロナウイルス感染症で亡くなられた場合は、24時間以内であっても火葬が可能となります。その場合には北九州市保健福祉局保健衛生課又は葬儀社から斎場へ連絡が入り、受け入れる斎場側は、一般の会葬者がいらっしゃらない時間帯に感染症予防対策を徹底して対応しています。
仰倉:火葬の予約を、葬儀社を通さずに個人でお願いすることも可能ですか?
場長:法律的には可能ですが、役所で行う死亡届や火葬場使用許可の手続き、棺や骨つぼの用意、ご遺体の搬送など火葬に必要な全ての準備を個人で行うことは難しいと思います。
また、葬儀もご自身で行う場合は、祭壇や仏具なども全てご自身で揃えていただかなければなりませんから、非常に難しいのではないでしょうか。
人が亡くなると、たくさんの届けや許可証の提出を求められます。
大切な人を亡くしたばかりの辛い時期に、あちこちへと走り回るのは大変な労力です。
葬儀を葬儀社が担うようになった理由のひとつは、ご遺族の負担を軽くするためでもあると言えるのですね。
(※2:ペースメーカーを取り外さずに火葬すると、機器が爆発するため非常に危険。すべての火葬場で必ず確認される)
火葬の時間は縮まらない。「早すぎない到着時間」を心がけたい
(出典:photo AC)
仰倉:参列者は、葬儀場から時間通りに来られる方がほとんどですか?
場長:それぞれのご都合があって、仕事先などからこちらに直接来られる方もいらっしゃいますね。遠方から車で向かっているが遅れそうだ、という電話を受けることもあります。
仰倉:もし早く着きすぎてしまった場合は中で待てますか?
場長:待合室は広いので待てないこともありませんが……受付は予約時間の10分前から行うので、早めに到着された場合はしばらくお待ちいただくことになります。
仰倉:あまり早すぎる到着だと、前のご家族、ご親族がまだいらっしゃるのではないですか?
場長:そうですね。お辛い思いを抱えている方もいらっしゃいますから、お別れの時間はなるべく邪魔しないようにと、私どもも気を配っています。
これは当斎場としての対応ですが、お子様を亡くされて個人で来られる方などへは、静かにお見送りができるよう朝一番の時間帯をご案内させていただいております。そのような方々へのご配慮もありますので、ご理解いただいて、受付開始の時間に合わせていらしていただけると助かります。
悲しいことですが、お別れの時間は必ず訪れます。
大切な一刻一刻を、互いに思いやりをもって過ごせるよう、火葬場への到着は予定された時刻を確認し、受付開始に合わせて向かいましょう。
焼骨にかかる時間はどれくらい? 棺に入れてはならないものがある
焼骨にかかる時間はおよそ1時間前後と言われ、およそ2時間以内で骨上げまで終えることができます。
しかし中には燃えないものを棺に入れたことによって、時間が延びてしまったケースがあるそうです。
仰倉:骨上げまでにかかる時間は、約2時間と言われますが。
場長:その方の体格や骨の状態、炉の状態などで違いは生じますが、一般的にはそのくらいの時間で終えられると思います。
仰倉:終えられない場合は、どんな理由があるのですか?
場長:体の大きな方や若い方は時間がかかることもあります。また、副葬品をたくさん入れられると時間がかかってしまいますね。お花以外のものは入れないでくださいとお願いしているんですが、時折こっそりと金属の物などを入れられる方がおられまして、燃えないものが入っていると想定した時間とずれることがあるので、この点はご注意いただきたいと思います。
仰倉:金属とはどんな物が?
場長:いろいろですが、仕事で愛用していた器具や機械とか、お子さまのおもちゃとかでしょうか。一度はゴルフクラブが入っていたことがありました……。
仰倉:ゴルフクラブですか! それはさすがに燃えませんよね?
場長:そうですね。こっそり入れても、燃え残るので職員には分かってしまうんです。あと、プラスチック系やビニール系も黒く残ったりします。
仰倉:ビニールなどはお骨に付着しそうですね。
場長:火葬場はそういったものを焼くための設備ではありませんし、金属もプラスチック系のものもお骨を痛める原因になりますから、お花以外のものは基本的には入れないほうが良いんですね。入れて良いか分からない物は、職員に必ず確認していただければと思います。
思い出の品を故人に持たせてあげたい気持ちはよくわかります。
中には、「燃え残るだろう」と思って入れたものが燃えてしまって慌てる方もいるそうです。
棺に入れるべきではない物をこっそり入れることが、供養につながるわけではありません。
ご遺体やお骨にあたって傷をつける可能性もありますから、入れたいものがある時はまず斎場に確認し、許可された物以外は持ち帰りましょう。
天候や炉の状態を見ながら、骨上げまで細心の注意を払う
(出典:photo AC)
火葬にかかる時間が安定しているのは、火力をコントロールする設備や技術の向上のおかげ。
実際には、天候や湿度、季節でも微妙な変化が生じると言います。
仰倉:体格によっても火葬にかかる時間が変化すると先ほどおっしゃられましたね。
場長:そうですね。体格やご年齢、お体の状況でそれぞれに違いがあります。
仰倉:それでもお骨を残すように火葬を行う日本の技術は、世界的に見ても非常に高いと言われていますが、どのような点に気をつけていらっしゃいますか?
場長:中には骨がもろくなっている方もいらっしゃいます。骨が弱っていると、火葬を終えた時点で骨の一部が欠けたり壊れていたりする場合もありますが、なるべくきれいにお骨が残せるようにと、職員は非常に気を配りながら火力を見て、管理をしています。
強い火力を用いながら、細やかに炉の調整・管理を行っている職員の皆さま。可能な限りお骨をきれいに残そうと、一人一人が努力を続けてくださっていることを、改めて知ることができました。
会葬者の多い葬儀だと弔問客の相手でかなりの時間を費やすことになり、葬儀場でお別れの時間をゆっくり持てない場合もままあります。
「だからこそ、ここに着いてからの本当の最期の時間は、大切にお過ごしいただきたいのです」との場長の言葉が心に沁みました。
悲しみの向こうにある「供養」
日本ではごく一般的になった火葬式。明治時代以降に全国へと広がった、日本独自のお見送りの形式です。
悲しみをこらえて天へのぼる煙を見送ったのち、この日のことを何度も思い出すのかもしれません。
斎場・火葬場に到着してからは、故人と過ごせる最期のひととき。
共有の待合スペースで他のご家族とともに過ごすこともありますが、供養の気持ちを大切に、互いへの思いやりを持ち合って過ごしたいものですね。