【人生100年時代の健康維持】臨床検査技師の見る『白血病』。どんな病気?検査や治療方法は?

人生100年時代、どんなに健康に気を使っていても病気になる可能性はあります。 それも生きていればこそなのです。 競泳選手の池江璃花子さんが白血病を公表に驚いた方も多かったのではないでしょうか。 白血病とは、血液の細胞のうち、白血球という細胞ががん化した病気です。 白血病は非常に多くの種類があり、若い人がなりやすい白血病がある一方、年齢とともに発症しやすくなる白血病もあります。 今回は、白血病がどのような病気なのか、さらに検査や治療はどのように行われるのかについて臨床検査技師の視点でご紹介します。
2019/03/09

白血病とは白血球ががんになってしまう病気

私たちの血液には、赤血球、白血球、血小板という細胞が含まれています。

これらの細胞は、胸骨、骨盤などの骨の内部(骨髄)で作られ、成熟すると血管の中へ移動して全身を巡ります。

 

このうち白血球は免疫を支配する細胞で、体内に侵入した外敵や異物から私たちを守ってくれる細胞です。

 

この白血球の遺伝子に異常が起こり、増殖する病気が白血病です。

白血球が増えるなら、免疫力は高まる?

白血球は免疫を司る細胞なので「白血病になって白血球が増えれば免疫力は高まるのでは?」と思いませんか?

 

しかし、実際にはそうはいきません。

 

白血病で増える白血球は異常なものばかりで、免疫力を発揮することが出来ないのです。

 

それどころか、狭い骨髄をがん細胞が埋め尽くしてしまうので、正常な細胞が増殖できなくなり、むしろ免疫力は低下してしまいます。

白血病が見つかるきっかけは様々

白血病は、なにか自覚症状があって医療機関を受診し発見される場合もありますし、自覚症状が全くない状態から健康診断などで偶然見つかる場合もあります。

白血病の初期症状は多彩

風邪かも・・・の時点でお医者さんに行ってください。

白血病の初期症状は、骨髄で正常な血液細胞(赤血球、白血球、血小板)が作られないことや、がん細胞が全身へ侵入することで起こります。

 

ですから、初期症状は非常に様々です。

【白血病の初期症状】

体のだるさ

息切れがする

顔が青白い(貧血)

鼻血や歯茎からの出血

内出血

頭痛

嘔吐

リンパ節が腫れる

これらの症状が複数現れる人もいますし、初めはどれか1つだけの症状だけ現れる人もいます。

 

だるさや発熱など、風邪に似た症状が最初に現れることも多いので、最初から白血病を疑って病院を受診するのは難しいです。

 

しかし、風邪とは違うのは次のような点です。

1週間以上経っても改善しない

改善してもすぐに体調を崩す

急激に体調が悪化する

白血病は初期症状がなくても、採血の検査でわかる

初期症状がない場合でも、血液の検査をすることで白血病が分かる人もいます。

 

この血液の検査は健康診断でも実施されているので、最低でも年に1度は健康診断を受けることが大切です。

白血病の精密検査では骨髄やリンパ節を調べることも

白血病に罹っているかどうかは血液の検査でわかりますが、白血病は専門医でも把握しきるのが大変なほど非常に多くの種類があります。

 

白血病の種類を確定するには次のような追加の検査が必要になります。

①骨髄検査

骨の中心部にある骨髄から骨髄液を採取し、顕微鏡で観察したり遺伝子の異常を調べたりします。

 

骨に針を刺すので、局所麻酔をかけて実施します。

 

採取自体は10分程度で終わりますが、検査結果が出るまでに時間がかかることが多いです。

②リンパ節生検

リンパ節で腫瘤(細胞の塊)が出来るタイプの場合は、リンパ節の一部を採取し、顕微鏡で観察します。

 

こちらも局所麻酔をかけることが多く、採取は早いですが結果が出るまでに時間がかかることが多いです。

③血液検査

一部の白血病はウイルス感染によって発症するため、このウイルスのDNAや抗体を検出します。

 

検査による体への負担は、通常の採血と変わりありません。

白血病の治療は主に抗がん剤と移植

白血病は他の臓器のがんとは違い、がん細胞が全身を巡っています。

 

ですから手術が実施されることはほとんどなく、抗がん剤や移植による治療がメインになります。

抗がん剤治療はほぼすべての患者さんで実施される

抗がん剤を体内に注入すると全身をめぐるので、全身にがん細胞が散らばっている白血病の治療には最も適した方法になります。

 

使用する抗がん剤によっては口内炎や吐き気、脱毛などの副作用に苦しむことも多いです。

 

最近はがん細胞にだけ効く抗がん剤(分子標的薬)も登場し、副作用が起こりにくいタイプのものもあります。

移植を実施するには様々なハードルが

白血病の治療法として有名なのが移植ですよね。

 

白血病では、造血幹細胞(血液細胞のもとになる細胞)を体内に移植します。

 

移植には次の3種類があります。

骨髄移植:他人の骨髄から採取した造血幹細胞を患者に移植します。

臍帯血移植:赤ちゃんのへその緒の中に残った臍帯血の造血幹細胞を患者に移植します。

末梢血幹細胞移植:薬で血液の中の造血幹細胞を増やし、その細胞を患者に移植します。

移植をするためには、拒絶反応が起こりにくい、相性のいい造血幹細胞を提供してもらわなければなりません。

 

この相性が合う確率は、兄弟であれば4分の1ですが、他人の場合は数百から数万分の1と言われています。

 

患者さんの状態や、相性のよい造血幹細胞が見つかるかどうかによって、移植の可否、移植方法が決まります。

 

白血病は移植さえすれば治るというイメージがありますが、そうではありません。

 

移植での治療を受けるには、まず移植前の強い治療に耐えなければなりません。

 

さらに移植できても移植による拒絶反応で患者さんの体が弱ってしまったり、がん細胞が消えなかったりということもあり得ます。

ですから、移植による治療にもまだまだハードルがあるのが現実です。

 

しかし、移植の治療法の研究も進み、近年は移植後の生存率が向上してきています。

「一般社団法人 日本造血細胞移植データセンター 2017年度 日本における造血幹細胞移植の実績」より引用
「一般社団法人 日本造血細胞移植データセンター 2017年度 日本における造血幹細胞移植の実績」より引用

白血病の早期発見には体調管理や健康診断が大切

今回は、白血病についての解説しました。

 

白血病は症状からすぐに白血病を疑うのは難しい病気ですが、体調不良が長く続いたり、急激に体調が悪くなったりする場合には注意が必要です。

 

また、健康診断を受診していれば症状が現れる前に病気が見つかることもありますので、最低でも年に1回は受診しましょう。

 

精密検査や治療については患者さんによって実施される内容が異なります。

 

もし白血病と診断された場合には、主治医から十分に説明してもらい、納得して治療を受けることが大切です。