【人生100年時代を楽しむために、知っておきたい日本の歴史】江戸のスーパーシニア「伊能忠敬」リタイア後に四万キロ踏破!史上初の日本地図を作成に至るまで(3)

人生100年時代。労働市場においてシニアの活躍に期待が集まり、人生の後半戦に突入したシニアの生き方、働き方にも注目が集まっています。 本連載では年齢にとらわれず、自分らしく生き、さらに成果を残した人々を、「スーパーシニア」と呼び、彼らの足あとを追いかけます。 現在の年齢感覚に置き換えれば70代に相当するシニア・伊能忠敬が、日本全国四万キロをついに踏破。史上初の日本全図を完成させるべく、愛弟子たちと奮闘する姿を描きます。
2019/04/11

当初、伊能忠敬はポケットマネーを使い、助手との測量旅行には赴いていました。

伊能忠敬銅像(香取市佐原公園)。平成30年(2018年)は伊能忠敬の没後200年で、地元・佐原駅前には新たに伊能の銅像が作られた。佐原だけで四体目。

当初、伊能忠敬はポケットマネーを使い、助手との測量旅行には赴いていました。

 

しかし次第に彼の仕事の意義が幕府の有力者にも知られるようになり、公費で補助が受けられるようになりました。

 

それに伴い、各地での待遇は一気によくなったそうです。

 

享和3(1803)年、かぞえで59歳の伊能忠敬が現在の富山県の射水地方をおとずれたときのことです。

 

当地の人々はすでに幕府がスポンサーになっている伊能忠敬御一行を、それは手厚くもてなそうと考えました。2018年に新湊博物館が発表した記録によると、現在でいえば「射水市の新湊地域中心部の材木問屋」に伊能忠敬は一泊しました。

 

地域の人々は、伊能が寝泊まりする部屋の畳を敷きかえ、鯛や卵といった値の張る食材や、当地の野菜を使った料理で迎えました。

 

ただし、伊能忠敬は早寝早起きで、用意された酒は飲まないままだったそうですが。

射水のひとびとが、伊能忠敬を一晩「おもてなし」するのに使った計費は45貫あまり(現代の価値で約50万円!)・・・・・・。

各地での測量作業を、伊能忠敬は文化13(1816)年ごろまで続けた

伊能忠敬邸宅

こうした各地での測量作業を、伊能忠敬は文化13(1816)年ごろまで続けました。

旅行が一区切りするごとに、地図を作り足していったそうですが、伊能忠敬は地図が完成する約3年前、文化15(1818)年4月13日に亡くなりました。享年74歳でした。

 

現代の年齢感覚に当てはめると、100歳目前の大往生です。

 

最晩年は、健康自慢で知られた伊能忠敬も衰弱してしまっていたようですが・・・・・・。

弟子たちは、彼の死を文政4(1821)年の地図完成まで、世間に秘密にしていました。

これは師の無念を思ってのことでしょう。

 

そしてようやく完成したのが、わが国最初の実測図「大日本沿海輿地全図(だいにほんえんかいよちぜんず)」、略称「伊能図」です。

 

いくらスーパーシニアとはいえ、伊能だけの力では完成しえない偉業でした。また、地図が完成した没後3年目あたりに、有名な伊能忠敬の肖像画も描かれたといわれています。

伊能忠敬が、慕われるシニアだったことがうかがわれますね。

完成した「大日本沿海輿地全図」は幕府に献上

完成した「大日本沿海輿地全図」は幕府に献上されましたが、その情報が公開されることはありませんでした。むしろ、それは避けられたともいえます。

 

当時、すでに日本近海には黒船があらわれ、外国の侵略が危惧されていたことと、せっかく完成した地図を秘匿させた幕府の判断は無関係ではないでしょう。

 

正確な地理が外国人に分かってしまえば、侵略は容易となりますから・・・・・・。

 

ちなみに、ドイツ人医師・シーボルト(1796―1866)が帰国時、日本国外に持ち出そうとして大問題となった文物の中に、伊能忠敬の「大日本沿海輿地全図」も含まれていました。

現代の日本地図と比べても1000分の1しか誤差のない正確さ

伊能忠敬の記念碑

伊能忠敬の偉業が、日本中にあらためて知れ渡ったのは、彼の「大日本沿海輿地全図」をベースに再測量を明治政府が行ったときだと言われます。

 

現代の日本地図と比べても1000分の1しか誤差のない正確さを誇る伊能の実測図は人々の驚きと称賛を浴び、伊能忠敬というスーパーシニアの名前は永遠に残ることになりました。

 

しかし、仮にごく若い頃から、測量学を学び、その成果を発揮できる立場に伊能忠敬がいたところで、この偉業は達成できたかはわかりません。

 

「こんなにすごいシニアがいる」という驚きが、幕府高官から地方の人々にいたるまで感動を呼び、それが伊能忠敬の「仕事」を支えた・・・・・・それは間違いない事実だからです。

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