【人生100年時代の暮らし方】リスクや変動に備えた、「賢い生き方」を考える。

人生100年時代。定年後、老後のライフプランについて考えたことはありますか? おそらく多くの方が、学校を卒業して、仕事をして、結婚して、子どもを育てて、定年を迎え、仕事をやめて好きなことをする…という流れを思い浮かべるでしょう。 けれどもし、みなさんが100歳まで生きるとなるとどうでしょうか?
2019/05/08

人生後半のLIFE SHIFT(ライフシフト)

こうした人生設計の道しるべになるのが、2016年刊行の「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略」です。この話題作はリンダ・グラットンが2012年に発表し、本国アメリカでもベストセラーとなりました。

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略

これまで、平均寿命は長寿大国の日本でさえ80歳台でした。

 

ところが本書では、平均寿命は今後100歳台になり、さらに、2007年に生まれた日本の子どものうち半数は107歳まで生きるため、変化に備えてライフプランを大きく変える必要があると主張します。

 

もちろん未来は正確に予測できません。とはいえ、人口予測の精度は比較的高く、著者の仮説がもし正しいなら、私たちは人生の考え方を見直さなければなりません。

 

本書を手がかりに、社会や個人の生き方が今後どのように変化するかみていきましょう。

これからも変わるライフステージと社会情勢

まず、日本の雇用組織の多くは60-70代で定年を迎えるため、残り30-40年くらいが老後の期間です。仮に年200万としても、6000-8000万円の莫大な老後資金が必要です。

 

老後も安心して暮らすための経済的基盤の確保には、年金などの公的社会保障に頼るだけでは心許ないでしょう。

 

また、これまで多くの人は「学校→仕事→引退」という3ステージの人生を歩んできました。しかし、70代まで働くのが当たり前となると、ステージの移行を数多く経験する「マルチステージ」の人生になります。離婚やリストラといったリスクもより想定しなければなりません。

 

テクノロジーの観点では、ロボティクスやAIによるオートメーションがますます発達します。

 

また、外国人労働者の規制緩和で移民の流入も増大し、単純労働者だけでなく、ホワイトワーカーも労働市場の価格競争に巻き込まれることが予想されます。

 

よって、一つの企業で定年まで過ごすのではなく、”自由で創造的に”職業を変えるノマド的・自営業的な生き方が今後求められるでしょう。

老後の”見えない資産”の大切さ

21世紀の日本では、少子高齢化を主因とする社会情勢の劇的な変化がますます進みますが、こうした事態に備え、人生には二つの資産が必要だと本書は指摘します。

 

お金や不動産などの目に見える”有形資産”と目に見えない”無形資産”です。

 

後者をさらに分類すると、生産性資産・活力資産・変身資産の三種類があります。

 

これらは平たく言えば、「友人や家族関係、健康、知識や能力」の集合体のことです。

 

たとえば、裕福で地位があっても不幸で寂しい人っていませんか?

 

親しい友人や家族がいなかったり、不健康だったり、常識や教養がなかったり…

 

それは無形資産が決定的に欠けているからなのです。人生100年時代では経済面以上に、長い時間を有意義に過ごすための無形資産を蓄えることが肝要だと本書は説きます。

 

前時代のフレームワークに固執せず、新たな人生観をもつ心構えが必要なことは分かりました。では、実際にどのように自由で創造的な人生を設計すればよいのでしょうか?

人生後半まだまだ長い。”二刀流”のすすめ

二足の草鞋を履く

昨年、メジャーリーガーの大谷翔平選手の投打にわたる活躍が話題になりました。

こうした”二刀流”や多刀流の生き方は若い世代を中心に近年増えています。

 

”二刀流”とはここでは「本業を高いレベルで極めつつ、本業以外の分野でも活躍すること」を指しますが、実は私たちにも大きな示唆を与えてくれます。

 

従来の日本社会では、このような生き方は「二足のわらじ」「二兎を追う者は一兎をも得ず」などと揶揄されました。かつては本業をおろそかにすると中途半端になり、実際に立ち行かなかったのです。現代は社会が豊かになり、情報共有も進んだため、複数のことがうまく回るようになったと考えられます。

 

つまり、これまで盲点となっていた、複数の仕事を設計することがポイントになりそうです。

 

とはいえ、著名人のような華麗な”二刀流”の実現は難しいでしょう。

それでも、たとえば、得意なことを生かした副業ならハードルは低いかもしれません。

 

副業なら、まず金銭的報酬が有形資産になります。そして、自分なりの「知識や能力」が得られます。時間をみつけて主体的に労働することは「健康」にもつながり、本業以外の社会的関わりは人間関係のネットワークを広げます。

 

副業による”二刀流”は有形資産と無形資産を同時に形成する、優れた手段となるでしょう。

まとめ:自由で創造的な生き方と、これまで想定されなかったタイプの資産

人生で大切なことは、今後世界や社会がどうなるか、絶えず未来を予測することです。

 

いつか確実にやってくる人生100年時代に求められるのは、自由で創造的な生き方と、これまで想定されなかったタイプの資産です。時代に合ったライフプランを考えることは、今後の長き人生にわたって心強い味方になってくれることでしょう。